パルス幅変調信号(APM)の原理と復元方法、問題

問題

下記図の矩形パルスg(t)のフーリエ変換G(f)を低域通過フィルタH(f)に入力したときの出力を求めたい。次の問に答えよ。

(1)g(t)のフーリエ変換G(f)を求めよ。また、τを0に近づけた時どのようになるか説明せよ。
(2)g(t)を基本周期とする周期Tの周期関数をフーリエ級数で表せ。ただし、下記の公式を用いて良い。
(1){an=2Tf(t)cos(2πntT)dtbn=2Tf(t)sin(2πntT)dt
(3)H(f)g(t)を入力したときの出力y(t)を求めよ。ただし、1T<B<2Tとする。

図:矩形パルスの入力と低域通過フィルタ

パルス幅変調(PAM)とは

ある周波数fmの信号周期T12fmごとに標本化し、パルス状の波形を持つ信号に変換することを言います。(PAM:Pulse Amplitude. Modulationの略です。)

標本化した後の信号は、帯域幅が12T以下の低域通過フィルタを用いれば、元の波形のみ復元できます。

受信側では、周期Tでサンプリングしていることが分かっています。そのため、受信した信号を周期Tで逆の処理をすれば、復元することができます。

パルス変調波形(PAM)の表現方法

フーリエ級数を用います。

(2)g(t)=n=g(nT)δ(tnT)

のように表現できれば、nは整数でデルタ関数を重ね合わせているため、パルス波を表現できます。

パルス変調波形(PAM)の復調方法

復調後の波形をy(t)とし、フィルタH(f)の時間領域表記をh(t)とすると、下記で表すことができます。

(3)y(t)=n=g(nT)h(tnT)

これは、下記の畳み込み積分の関係から来ています。(nは整数)

(4)y(t)=g(τ)h(tτ)dτ

g(t)はt=nTでのみ値を持つ離散時間信号なので、(3)式になります。

なお、フィルタH(f)の帯域が広いほど、y(t)で出力するg(nT)の整数nが多くなります。(3)で説明します。

解答例

(1)パルス波のフーリエ変換

(5)G(f)=τ2τ21τej2πftdt=[ej2πftj2πf]τ2τ2=sin(πft)πft

τ0のとき、sin(x)x1だから

(6)G(f)1

単位インパルス関数になる。

(2)g(t)のフーリエ級数

問題文で与えられた公式より、矩形波の範囲はτ2tτ2なので

(7){an=2Tτ2τ2g(t)cos(2πntT)dtbn=2Tτ2τ2g(t)sin(2πntT)dt

で、g(t)は偶関数なので、bn=0

anについて、問(1)の結果を利用し

(8){a0=1Tan=2Tsin(πnτt)πnτt

よって、g(t)のフーリエ級数は

(9)g(t)=1T+2Tsin(πnτt)πnτtcos(2πntT)

(3)低域通過フィルタを通した時の出力信号y(t)

フィルタの帯域1T<B<2Tについて、f<B<2fと書き換えられる。

Bは絶対値なので、周波数0,±fのフーリエ級数を持つg(t)がフィルタを通過する。n=1,0,1の成分が対応する。

よって、出力信号は下記になる。

(10)g(t)=1T+4Tsin(πτT)πτT(2πntT)

最後に

本問は、あまり院試では出ないかもしれません。

ただ、背景知識として出題されることがあります。

通信工学が試験範囲の大学院を受験される方は、是非理解しておくと良いです。

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