数学の試験範囲
線形代数、解析学、複素関数から構成されています。概要から説明していきます。
京大 情報学研究科 先端数理科学専攻 院試の全体
基礎科目(90分)+専門科目(90分)で構成されています。本記事では、基礎科目(5題)のうち数学4題を説明します。
年度にもよりますが、線形代数が2題であることが多いです。他、ニュートン法、区分求積を用いる問題があります。(分野は数値解析学?)
各年度、4題中3題は取り組みやすいです。問題集でよく出てくる典型問題が多いです。(行列の対角化、複素積分など)
ですが、残り1題が難しいことがよくあります。
一般的な合格点(6,7割)を取るうえでは部分点で良いですが、なるべく役立ちそうな参考書を紹介していきます。
5問中3問選択ですので、1題につき30分です。簡単な問題をうまく選択できると十分余裕のある時間になります。
傾向と対策
全体
最近6か年は以下の分野の出題がありました。
- 2023年:
- 行列式、回数の計算。可換の証明。
- べき級数の収束半径。
- n*n行列の存在判定。
- 体積分の計算。
- 2022年:
- 行列の階数計算
- 拡張行列の対角化
- 留数定理を利用した複素積分
- 重積分(極座標変換)
- 2021年:
- 正則行列の条件
- トーレスの計算
- 数列の極限、収束計算
- 有理関数の広義積分
- 2020年:
- 微分と接平面
- 有理関数の複素積分
- 行列の対角化
- 行列の座標変換(2次形式)。楕円体の積分
- 2019年:
- nを大きくしたときの積分の極限。重積分(極座標型)の計算
- 関数の連続性。極値。
- 行基本変形と行列式の計算
- 行列の対角化と連立微分方程式の計算
- 2018年:
- 行列の階数。次数の大きい行列の計算。
- 直交行列と対角行列
- 積分と大小判定
- 留数定理を利用した三角関数の複素積分
赤太字で記載した問題が難しいと感じました。各年度1問程度あります。
拡張行列の対角化は、3*3のある正方行列を、4*3,3*4の行と列の数が一致しない行列を使用して対角化する問題です。参考書での紹介が少なく、解いた管理人も自信がありません。
有理関数の広義積分は、類題経験があれば赤太字問題の中では解きやすいです。しかし、解答には複素積分の考え方を使わないと解けない箇所があり、その区間の取り方に工夫が必要です。
座標変換は、前半の問題は簡単ですが、座標変換した系においての積分が難しいです。2次形式を楕円体に変換できるので、後は公式を用いて答えが求まりますが、初見でここまで気づくことは難しいでしょう。
積分と大小判定は、色々な解き方があると思います。管理人は、数値解析学で用いられる台形積分の考え方を使用して解きましたが、計算量が多かったです。うまい不等式の評価方法があれば、赤太字ではなくなるかもしれません。
以上のように、線形代数で難問が出題される可能性が高いです。次章で、対策本など紹介します。参考に下さると幸いです。
対策に使える参考書
学部入試と同様、京大の院試問題も、多くは語らない短い文章の問いが多いです。
解答の引き出しを多く持っておくことで、突破口を見つけることができます。
詳解と演習大学院入試問題 海老原 円 (著), 太田 雅人 (著)
相変わらず、こちらの問題集がオススメです。難易度、分量ともに京大院試に最適です。また、一つの問題に対する考え方を詳細に説明しています。A問題だけでも目を通してみましょう。
対策に使える参考書(線形代数)
マイナー本ですが、細かい定理まで説明しています。対角化など、固有値、固有ベクトルを求める一般的な方法に追加して、2022年に出題された拡張行列の対角化を解くヒントになるような事項を説明しています。線形代数で差を付けたい方は、購入されると良いです。
欠点は、定理の説明だけで演習問題が無いことです。このため、読み物知識として持っておき、難問が出題されたときに引き出しとして持っておく使い方をオススメします。
対策に使える参考書(解析学)
微分積分: 大学院入試問題から学ぶシリーズ 池田和正 (著)
海老原先生の問題集から少し易しくなった難易度です。極値の問題、数列として積分を扱う問題も含まれており、対策になる問題も多いです。
過去問を確認し、対策に使えそうと感じた問題を解くことをオススメします。重積分と極値の分野が特にオススメです。
対策に使える参考書(複素関数)
京大シラバスを調べたところ、特に教科書の指定はありませんでした。ご自身のお持ちの教科書で十分とは思います。
一応、管理人としては、他記事と同じく下記を紹介します。
応用数学 (工学系数学テキストシリーズ)工学系数学教材研究会(編集)/上野健爾(監修) (著)
ラプラス変換、微分方程式に関する内容も混じっています。複素関数の章だけ読むと良いです。分かりやすいので、数日もあれば1周できる分量です。
掲載されている問題が解けるようになったら、過去問に挑戦してみると良いです。
対策に使える他大学の問題
本専攻の院試問題は、特に京大色が強いです。短い文章の問題で問う大学が他に見つからないため、過去問を解くことが最も有効だと思います。
その上で、対策に使えそうな大学を紹介します。
線形代数は、強いて言えば阪大(電気電子情報通信専攻)の数学を確認してみると良いです。文章量が多いので、ここは京大対策になりませんが、難易度自体は京大に一番近いと思います。
解析学については、取り扱っている大学を述べたのみです。残念ながらオススメできる大学はありません。ご自身で調べてみて、気になった問題を解く使い方をされると良いです。
最後に
5題中3題の選択のため、難しい問題を選択しないことも可能です。簡単な問題を選択することができれば、1題30分でも全然間に合う分量と思います。
本番は、是非問題を一読し、解けそうなものから着手していくことをオススメします。