はじめに
京大(通信情報)の電磁気学は、電場、磁場で構成されています。(電磁波は無し)
両者ともに、レベル的に標準的な問題が多く、市販の問題集で対策がしやすいです。しかし、中には独特な内容を問われることがあります。
京大 情報学研究科 通信情報システム専攻 院試の全体
2022年度までの出題分野について
下記の試験科目9題から4題を選択し、解答します。試験時間は180分です。45分/1題のため、時間に余裕があります。
電磁気学は、数学に対して計算量が少ないです。1題45分の枠で解いても時間が余るかもしれません。情報系の受験者が多いので無理強いはできませんが、得意なら是非選択して欲しい科目です。
ですが、中には”京大らしい”問題もあります。
2022年のように、地球を磁気双極子と見立てて、磁界を求める問題が特にそうです。
こういった問題は、市販の参考書ではなかなか見受けられません。
過去の年度で用語の説明問題が出題されています。こちらを通して、電磁現象の本当の意味を学ぶことが重要だと思います。
<注意> 2023年度以降の出題について
2022年度までに対し、試験範囲が変更になりました。
今まで、電磁気学は専門基礎Aでの選択科目でしたが、専門基礎Bに移動になりました。
科目群が移動になっただけで、設問内容自体は2022年までと変わりません。よって、次章では、2022年までの出題傾向も踏まえながら対策方針を紹介していきます。
傾向と対策
全体
最近6か年は以下の分野の出題がありました。
- 2023年:
電場:ガウスの法則の用語説明。 - 2022年:
電場:鏡像法と成立する理由の説明。
磁場:地球の磁気双極子モーメントと発生する磁場の関係 - 2021年:
電場:導体球コンデンサの静電容量とラプラス方程式の関係
磁場:平行導体から発生する磁場。ベクトルポテンシャル - 2020年:
電場:円筒導体から発生する電場。電位。
磁場:ソレノイド内の磁場。 - 2019年:
電場:平行板コンデンサの静電容量。等電位面の図示。
磁場:円形コイルから発生する磁場 - 2018年:
電場:円筒コンデンサのパラメータ算出。電磁気学の用語説明。
磁場:無し
全体として、問題集でよく見る典型問題が多いです。ただし、用語、電磁現象の説明問題が一部出題されますのでその対策が必要です。
電場:真空中の電場を求める問題が多いですが、2018年のように誘電体が絡むことがあります。分極電荷など、誘電体内の細かな振る舞いを説明できるようになった方が良いかもしれません。
磁場:2022年の地磁気もそうですが、2021年の(2)(d)のベクトルポテンシャルなど、計算に工夫のある問題がたまに出題されます。三角関数を利用し、煩雑にならない式変形が求められますので、その練習を行った方が良いです。
対策に使える参考書
電磁気学は、市販の教材が充実しています。わざわざ、本サイトで紹介するまでも無いですが、京大の傾向に合わせるなら。という観点で説明していきます。
1.電磁気学 島崎眞昭, 松尾哲司著
京大内部で使用されている教科書のようですが、amazonなどで検索してもヒットしませんでした。一般的な内容を問われますので、他の教科書でも代用可能と思います。
(もし、上記の参考書を扱っているサイトがありましたら、是非ご教授をお願いいたします。)
2.電磁気学 砂川 重信 (著)
少し古い本ですが、砂川先生の教科書をオススメします。理由は、懇切丁寧な説明になっているからです。昨今の教科書は、分かりやすく説明している反面、ぼかした説明になっている部分もあります。
しかし、京大院試では論述問題があるため、半端な説明は許されません。そこで、原理原則からしっかり理解できる昔ながらの参考書をチョイスしました。
対策に使える問題集
3.電磁気学演習 (理工基礎物理学演習ライブラリ 3) 山村 泰道 (著), 北川 盈雄 (著)
東大電気系の院試でも紹介しましたが、山村先生の演習書をここでも紹介します。教科書で説明されている内容のさらなる理解を問題を解くことで身に着けられます。
現象を説明できるようにもなりますので、論述問題でも引き出しが増えると思います。
4.電磁気学 第2版 (大学院入試問題から学ぶシリーズ) 中村 徹 (著), 江沢 洋 (監修)
こちらもオススメです。一つの問題に対する考え方を丁寧に説明されているため、京大院試と相性が良さそうです。
ただし、電気双極子など、理学部っぽい問題が取り上げられているページもあります。京大院試の頻出範囲になっている箇所から読んでいくことをオススメします。
<補足>
詳解 電磁気学演習は今回は登場しません。原理原則をしっかり理解、説明させる京大院試においてはそこまで重要では無いと判断しました。
対策に使える他大学の問題
前述の通り、京大(通信情報)の電磁気学は、典型問題+論述で出題されます。
典型問題は、わざわざ他大の院試に手を広げるまでも無く、市販の問題集を行えば良いと考えるものの、一応紹介します。(他大学を併願する際の参考にもなると考えますので)
東北大レベルが相応しいと考えます。東北大は、院試の試験時間が60分に短縮されたことで、問題が易化傾向にあります。これが、昨今の京大(通信情報)の電磁気学とレベルが合っているように感じます。
東大、東工大、阪大レベルの内容は、オーバーワークと考え、この選定にしました。
磁場は、北大(情報エレク)を追加しました。円環電流から発生する磁場計算が頻出ですので、役立つと思います。
論述は、他大学ではあまり出題されないです。京大の過去問と教科書を読みなおすしか無いと考えます。
最後に
1題45分試験時間に対し、京大(通信情報)の電磁気学は時間が余りそうです。併願先との兼ね合いもありますが、選択可能ならば使用することをオススメしたいです。