はじめに
京大(通信情報)の電波工学は、電磁波、アンテナから構成されています。傾向としては、アンテナからの出題が多めです。概要から説明していきます。
京大 情報学研究科 通信情報システム専攻 院試の全体
2023年度院試より、出題範囲に変更がありました。専門基礎Aで下記4科目を必須選択とし、専門基礎Bが選択科目の扱いになりました。13題中6題出題され、そのうち3題を選択します。
電波工学は、専門基礎Bに該当します。2022年度以前も選択科目Bだったため、特に変化点はありません。
出題範囲としては、電磁波の反射、透過、アンテナの性質について問われます。前者については、電磁気学の講義で扱われることもあり、取り組みやすい分野だと思います。
後者については、専門書を読む必要があり対策が必要です。ただし、マニアックな問題は少ないため、勉強するだけ報われやすい分野だと思います。
傾向と対策
全体
最近6か年は以下の分野の出題がありました。
- 2023年:出題無し
- 2022年:
微小ダイポールアンテナの磁場、遠方界の電場の計算。 - 2021年:
微小ダイポールアンテナの放射電力、抵抗、利得の計算。 - 2020年:
電磁波の反射係数、透過係数の計算。アンテナに関する用語説明。 - 2019年:
斜め方向に入射する電磁波の反射率の計算。アンテナに関する用語説明。 - 2018年:
微小ダイポールアンテナの放射電力、利得、受信電力。
アンテナに関する計算問題は、微小ダイポールアンテナを題材に問われます。教科書で必ず説明される内容ですので、しっかり導出できるようになることをオススメします。
一方で、用語説明問題については、様々なアンテナに対して問われます。よって、微小ダイポールアンテナだけ勉強していれば、それで良いわけではなく、他のアンテナについても動作原理を理解しておく必要があります。
電磁波の透過、反射の計算については、特に電磁気学と変わりません。境界条件を元に電場と磁場の関係式を連立し、パラメータを導く定石手段で解決することが多いです。
対策に使える参考書
基本的に、下記の参考書一択だと思います。
電波工学 長谷部 望 (著)
京大のシラバスで紹介されている教科書です。指定教科書のため、記載されている内容がよく出題されます。値段も張らないため、購入必須だと思います。3章(電磁波の透過、反射)、5章(アンテナ)の内容が特に問われます。
電磁波工学 安達 三郎 (著)
こちらの本もオススメです。長谷部先生の本は、微小ダイポールアンテナの電場、磁場の導出(5章)の説明が少し抜けていることがあります。
こういった時、別の本を読むことで、別の視点で考えることができるようになります。理解が深まるため、電波工学を得点源にしたい場合は購入を検討してみると良いです。
補足
対策に使える問題集についてはあまり紹介できません・・・。
電波工学自体がマニアックで、他大学の院試では出題されないためです。
大学院入試問題解法と演習電気・電子・通信 (3) 姫野 俊一 (編集)
一応、こちらの問題集の10章で電磁波が取り扱われているものの、京大の院試対策としては微妙です。電磁波の透過、反射に関する問題はありますが、他問題集と内容が変わりません。
最も需要があるはずのアンテナに関する問題が無いことから、参考程度の紹介です。ご自身の所属する大学の図書館に蔵書されているときに覗いてみるくらいで良いと思います。
対策に使える他大学の問題
前述の通り、アンテナに関する問題が他大学ではあまり出題されません。それどころか、電磁波の反射、透過でさえ、出題される大学が限られています。
強いて言えば、上記の大学で出題されたことがあります。ですが、参考になるかと言うと微妙です。
電磁波については、2つの大学を紹介させていただきましたが、市販の参考書、問題集と問題内容が変わりません。オススメしたい問題が無いため、一応の紹介です。
アンテナは、工学部の院試では見当たりませんでした。東大をはじめとする理学部物理学科の院試でたまに取り扱われることがありますので、理学部の院試を見た方が良いかもしれません。
結局、参考書の内容を完璧にすることが、得点源にする近道だと思います。
最後に
電波工学は、電磁気学が得意ならば是非選択できる科目だと思います。出題範囲自体は狭いため、短い勉強時間で得点期待値が上がります。
他科目の兼ね合いもありますが、是非上記の教科書とともに対策することを検討下さればと思います。