詳解電磁気学演習のオススメ問題一覧 (4,5章)

はじめに

本記事は、前回の記事の続きです。

詳解電磁気学演習は、多数の問題が収録されており、電磁気学の勉強をする上で必ず持っておきたい本です。

一方で、「全部解くことはできないため、試験で出てきそうな問題を解きましょう。」と本サイト、他者様問わず、よく説明しています。

院試勉強を始めた段階だと、具体的にどのような問題が頻出なのか判断付かないと思います。

そこで、本サイトでは、是非とも解いておきたい問題を章ごとに紹介しています。

詳解電磁気学演習の章立て

章立て (赤字:本記事で紹介)
  1. 真空中の静電界
    • 真空中の電荷分布による静電界
    • 電気力線とガウスの定理
  2. 真空中の導体系
    • 真空中の導体系一般論
    • 静電容量とその配列
  3. 誘電体中の静電界
    • 誘電体中の静電界
    • 誘電体でのエネルギーと力
    • 特殊な誘電体
  4. 静電界の特殊解法
    • 電気映像
    • Laplace方程式の解
    • 等角写像
  5. 定常電流
    • Ohmの法則
    • 回路網の電流
    • 連続導体内の電流
    • 電力・Joule熱
    • 熱電現象
  6. 静磁界
    • 真空静磁界
    • 磁性体
  7. 電気磁気の相互作用Ⅰ:定常電流による磁界
    • 定常電流による磁界
    • 磁気回路
    • 磁界が電流におよぼす力
  8. 電気磁気の相互作用Ⅱ:電磁誘導
    • 電磁誘導
    • インダクタンスの算出
    • インダクタンスと電磁現象
    • 非定常電流の諸現象
    • 過渡現象
  9. 交流
    • 交流理論
    • 交流回路網
  10. 電磁波
    • 電磁波の伝搬
    • 電磁波の立体回路
    • 電磁波の放射
  11. 電気力学以降は、工学部電気系の院試で出題されているところはあまり見たことがありません。省略します。

問題のレベル分け

「院試に出てくる問題」及び「院試問題を解くために必要な知識を習得する問題」という観点で紹介しますが、どうしても問題のレベルは存在します。

そこそこ勉強している方に基礎問題の紹介しても仕方ないと考えますので、3段階で分けることにします。

☆★★:基礎(高校レベル)
☆☆★:標準(大学講義レベル)
☆☆☆:応用(院試レベル)

オススメ問題

4章:静電界の特殊解法

電気映像

俗にいう鏡像法です。経験則から解く問題が多く、初見ではどうにもならないことが多いです。

問題パターンとしては、下記2パターンあります。

1.平板に対し、電荷を設定したとき
2.球に対し、電荷を設定したとき

電荷が点電荷、線電荷の場合、誘電体内に電荷を設定するなど様々なパターンがあります。

是非、本書で経験を積んでいきましょう。

問題[1] 球殻内に点電荷を置いた時、誘導される電荷 ☆☆☆

対策になりそうな大学:全般

必ず演習したい問題です。鏡像法の考え方、問われるであろう問題が詰まっています。

(5)(6)で、平板に誘起される電荷の総量が-qである計算もできます。

立体角を利用した方法、電場を積分して求める2通りの方法があります。

後者は是非ともできるようになりましょう。

問題[4] 球殻内に球電荷を置いた時、誘導される電荷 ☆☆★

対策になりそうな大学:全般

問題[1]と基本的に同じです。電荷が点から球になっただけです。

平板と球電荷の電位差は、鏡像電荷との電位差を求めた結果を1/2倍することだけ忘れてはいけません。

問題[5] 球殻内に球電荷を置いた時、誘導される電荷 ☆☆★

対策になりそうな大学:神戸大

神戸大で毎年のように出題されます。問題[4]と電場の式が変わるだけで、考え方に変わりはありません。

上記の大学を志望する方は是非解きましょう。

問題[8] 導体球に対し適用する鏡像法 ☆☆★

対策になりそうな大学:全般

平板以外にも導体球に対しても鏡像法を用いることがあります。

この場合、球の内部\(\frac{a^{2}}{d}\)の位置に\(q=-\frac{a}{d}\)鏡像電荷を設定します。

問題[8-2,3] 電荷qが一定速度で移動するときに、接地導線に流れる電流 ☆☆☆

対策になりそうな大学:東大

東大で出題されたことがあります。球に誘導される電荷が\(q=-\dfrac{aq}{x}\)で、分母が変数になります。

\(I=-\frac{dq}{dx}=\frac{aqv}{x^{2}}\)の関係に気づくことがキーポイントです。

問題[19-1] 誘電体内に電荷を設置したときの鏡像電荷 ☆☆☆

対策になりそうな大学:全般

特に神戸大で頻出です。

金属導体と同じく、境界面に対し反対の位置に鏡像電荷を設定。の方針は同じですが、設定する電荷量が今までと違います。

理由とともに解けるようになりましょう。

Laplace方程式の解、等角写像

院試として出てくる問題が少ないです。n次の項に展開して解く様が、どうしても人間の手では行いづらいからです。

理学部向けの院試で誘導付きで出てくるかもしれませんが、工学部の院試では少なくとも見たことがありません。

等角写像についても同じです。少なくとも、誘導付きで初めて検討できる問題ばかりです。

他科目、分野の勉強時間に充てることをオススメします。

5章 定常電流

電気回路的な問題が多いので、あまり電磁気学として出題されることは少ないです。

ただ、いくつか取り上げられる問題がありますので、その分だけ紹介します。

Ohmの法則、回路網の電流

電気回路的な問題が多いです。電磁気学として紹介できる問題が無いです。

必要に応じて各自で自習ください。

連続導体内の電流

5章において、この節だけは確認した方が良いです。大学によっては良く出題されます。

問題[21]同軸円筒の内側導体-外側導体間の電位差 ☆☆★

対策になりそうな大学:東大、東工大、九大

ある区間の抵抗値を積分し、円筒導体全体の抵抗値を求めることがキーポイントです。

これさえできれば、後はオームの法則に従うだけです。

問題[23-2]完全導体に対して球電荷を置いた時の抵抗 ☆☆★

対策になりそうな大学:東大、東工大、九大

鏡像法の知識を使います。電位差を求めた後、\(R=\frac{\varepsilon \rho}{C}\)の関係から求めます。

問題[24-4]平板上に2つの円筒形電極が置かれているときの合成抵抗 ☆☆☆

対策になりそうな大学:東大、東工大、九大

九大で出題されたことがあります。

一方の電極から流れ出た電流は最短距離でもう一方の電極へ流れます。その関係を利用して電位差を求めます。

電力・Joule熱、熱電現象

電磁気学の院試としてはあまり出てこないので、ここでは取り上げません。

最後に

次章以降は、いよいよ静磁界の問題を紹介していきます。

電流と磁場の関係を問題演習を通して理解していきましょう。

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