はじめに
京大(通信情報)の数学は、線形代数、解析学、微分方程式、複素関数で構成されています。傾向と対策方針を紹介します。
京大 情報学研究科 通信情報システム専攻 院試の全体
2022年度までの出題分野について
下記の試験科目9題から4題を選択し、解答する形式でした。試験時間は180分です。45分/1題のため、時間に余裕があります。
ただし、計算量が多い大問も存在します。今回紹介する数学が特にそうです。
年にもよりますが、A-1<A-2 の難易度であることが多いです。計算量がA-2の方が多くなりがちで、範囲が広いからです。A-1は高校数学の知識でごり押し可能な問題もあります。
ただし、出題パターンとしてはA-2の方が絞りやすいです。留数定理を用いた積分。ラプラス変換、フーリエ変換を利用した積分の求値問題は、ほぼ毎年のように出ています。
微分方程式は様々な型が出てきますが、どれも問題集で一通り演習することで太刀打ち可能です。
他大学でもよく出題される試験分野です。併願する際は、両方選択するつもりで勉強すると良いです。
<注意> 2023年度以降の出題について
2022年度までに対し、試験範囲が変更になりました。
今まで、専門基礎Aは選択式でしたが、下記4題が必修になりました。そして、必修に選ばれなくなった科目は専門基礎Bに移動になりました。
A-1(線形代数、解析学)が必修になりました。本専攻を志望する際、対策が必須になりました。
そして、A-2(複素関数、フーリエ解析、微分方程式)は専門基礎Bに移動になりました。
出題される科目群に変化はありましたが、出題範囲及び出題分野は2022年度に実施した入学試験と変化していないことを京大HPで説明されています。
ですので、次章の傾向と対策の説明内容自体は、2022年前後で特に変わらないです
傾向と対策
全体
最近6か年は以下の分野の出題がありました。
- 2023年:
A-1:直交座標➡極座標の変数変換。β関数。行列の対角化。
B-1:フーリエ変換。微分方程式の一般解。留数定理を利用した広義積分。 - 2022年:
A-1:2変数関数の極値。重積分。曲線の長さ。行列の固有ベクトル。
A-2:フーリエ変換を利用した積分。オイラー型微分方程式。留数定理を用いた積分。 - 2021年:
A-1:逆三角関数の導関数。重積分。2*2行列の固有値、固有ベクトル。
A-2:フーリエ余弦変換を利用した積分。2階線形微分方程式。留数定理を用いた積分。 - 2020年:
A-1:極限と曲線の面積。行列式の計算
A-2:フーリエ余弦変換の計算。2階線形微分方程式。留数定理を用いた積分。 - 2019年:
A-1:ガンマ関数。行列の対角化
A-2:フーリエ変換を利用した積分。2階線形微分方程式。留数定理を用いた積分。 - 2018年:
A-1:重積分。ガンマ関数の計算。行列の対角化とn乗。
A-2:フーリエ変換の計算。三角関数付きの常微分方程式。留数定理を用いた積分。
A-1について:極座標の積分、計算など、他大学ではあまり見られない問題が出題されることがあります。こちらは、京大専用の対策が必要と考えます。他、ガンマ関数など、特殊関数が出題されることがあります。
A-2(2023年からB-1)について:積分を制する者が大問を制します。本ブログでも類題を多数取り扱っています。是非ともご確認ください。(下記)
対策に使える参考書(数学)
数学の教科書はどれも大差ありません。院に入学後、数学を研究テーマにするならば慎重になった方が良いです。しかし、工学部の場合の場合は道具としての使用になると思います。
昨今は、数学の解説サイトが充実しています。教科書を買わずとも、分からない問題に当たった時はネットで調べることで解決してしまう場合も多いです。
そこで、本サイトでは院試対策に重点を置き、問題集の紹介をします。
詳解と演習大学院入試問題 海老原 円 (著), 太田 雅人 (著)
個人的に、数学の問題集No.1だと思います。院試レベルの問題を事細かに解説しており、全分野カバーしています。難しい問題もありますが、A問題から順に解いていくことでステップアップできると思います。
対策に使える参考書(線形代数)
線形代数 (大学院入試問題から学ぶシリーズ) 池田和正 (著)
こちらもオススメです。詳解と演習大学院入試問題と比較して簡単な内容です。知識確認の意味も含めて購入すると良いと思います。
少ない時間で1周でき、合格点レベルは取れるはずです。
対策に使える参考書(微分積分)
微分積分: 大学院入試問題から学ぶシリーズ 池田和正 (著)
線形代数と同じです。全て解く必要は無く、頻出分野の極値、重積分の章を重点的に行うと良いです。
対策に使える参考書(微分方程式)
演習微分方程式 (演習数学ライブラリ 新版 3) 寺田 文行 (著), 坂田 ひろし (著)
こちらの問題集が最もオススメです。様々な微分方程式の型がありますが、取りこぼしなく問題掲載されています。解答解説の内容も十分あります。
章の最初には、解法まとめページもあります。これだけでも必見です。
対策に使える参考書(複素関数、ラプラス変換)
応用数学分野です。冒頭に紹介した海老原先生の問題集で十分と思いますが、その他の候補を紹介します。
応用数学 (工学系数学テキストシリーズ)工学系数学教材研究会(編集)/上野健爾(監修) (著)
内容がまとまっていて、分かりやすい教科書です。演習問題のレベルもそれなりで、院試問題で合格点を取る知識が短期間で身に付きます。
対策に使える他大学の問題
一部、京大独特の問題があります。全ての分野の紹介は難しいですが、できる限りリストアップしていきます。
京大(通信情報)の線形代数は、平易な問題が多いです。難問の演習を行うよりは、基本事項を固めた方が良いと考え、東北大、電通大が相応しいと考えます。
解析学は、電通大の方が良いかもしれません。ただし、ガンマ関数などの特殊関数の積分問題が出たときを想定し、名大も赤字にしました。
微分方程式は、線形代数と同様平易な問題が多いです。一問一答型のため、後半の複雑な問題へ誘導していく形式とは異なります。このため、基本事項の習得が最優先と考え、神戸大をオススメします。
フーリエ変換、ラプラス変換は計算が複雑で、難しめの印象が強いです。これだけは阪大の院試問題でゴリゴリ計算できるよう対策した方が良いです。
最後に
1題45分試験時間が用意されていることから、数学を選択することは十分オススメできます。
本番は、問題の相性に合わせて数学で1,2題選択し、後半の科目群で残りを埋め合わせていく作戦が適切だと考えます。