【東北大学大学院】 マテリアル・開発系 院試対策(数学、物理、熱力学)

院試全体

出題科目が多いものの、数学を除いて選択性になっています。自身の得意な科目を中心に受けることが可能ですが、選択すべき科目数は多いことと、出題範囲が広い(自分の勉強した範囲が出題されるとは限らない)ことに要注意です。

本記事では、数学、物理、化学(熱力学)の分野についての対策を説明します。

出題科目
  • 必須科目
    • 数学1 微分積分 線形代数 複素関数
    • 数学2 フーリエ変換 ラプラス変換 ベクトル解析
      ※数学1の分野が2で問われることもあり、上記範囲から2題構成で出題される。
  • 選択科目 5科目10題中 4題選択
    • 物理1 質点、剛体の力学、解析力学
    • 物理2 電磁気学、波動、量子力学
    • 化学1 化学熱力学
    • 化学2 原子、分子の構造、化学反応、有機化学基礎など
    • 材料化学1 材料物理化学 材料電気化学 移動現象論
    • 材料化学2 金属精錬・精製学、応用材料化学、材料プロセス光学など
    • 材料物性1 固体物性、磁性・誘電材料
    • 材料物性2 材料組織学、材料強度学など
    • 材料加工1 材料力学、破壊力学など
    • 材料加工2 材料評価、加工解析学、鋳造・粉体・塑性加工,溶接・接合など

対策に使える参考書、問題集

全体

最近3年分は以下の分野の出題がありました。

  • 2024年8月実施問題:
    • 数学1
      • 複素積分と重積分
    • 数学2
      • フーリエ変換と微分方程式
    • 物理
      • 台車と質点のラグランジアン (解析力学)
      • 同心球殻とガウスの法則 (電磁気学)
    • 化学(熱力学)
      • ボイルシャルルの法則の説明、グラハムの法則と噴射速度
  • 2023年8月実施問題:
    • 数学1
      • スカラー関数の勾配、勾配の回転、発散
      • 行列の可換性
    • 数学2
      • 複素関数とローラン展開
    • 物理
      • ブラッグ反射の性質 (波動)
      • 無限井戸型ポテンシャルの波動関数分布 (量子力学)
    • 化学(熱力学)
      • カルノーサイクルの性質
  • 2022年8月実施問題:
    • 数学1
      • 逆行列の計算
      • ベクトル場の体積分
    • 数学2
      • 複素関数と積分
    • 物理
      • 二種類の質点の振動と位相 (力学、波動)
      • 電気双極子と電場の大きさ (電磁気学)
    • 化学(熱力学)
      • 気体分子運動論

どの分野も、見かけたことのある設定問題が多いです。全く手が付かないことは無いでしょう。ただし、冒頭でも述べたように、自分の勉強した分野が出題されるとは限らないです。

数学を見てみても、線型代数はどの大学でも必答であることが多いです。しかし、本専攻においては2024年の出題がありませんでした。
物理を見てみても、古典力学の出題は2024年にありませんでした。また、2022年も運動方程式の概念を使いこそはしましたが、中身はほぼ波動でした。電磁気学、量子力学も、出題されない年があります。(それぞれ2023,2024)

化学についても、熱力学の出題頻度は高いですが、過去には出題されなかった年がありました。また、2024年後半のグラハムの法則については化学の知識も含まれています。機械系、物理系の熱力学だけ勉強していれば不十分なこともあるため、次回の記事で述べる科目も含めて1科目多めに勉強しておくことをオススメします。

教科書

数学

問題の難易度がそれほど高くないですので、自身のお持ちの教科書をそのまま勉強することをオススメします。一応、全分野網羅的に勉強できる問題集を下記に示しますが、重要性は低いです。

詳解と演習大学院入試問題 海老原 円 (著), 太田 雅人 (著)

線型代数、複素関数、微分方程式、ベクトル解析のA問題だけの勉強で事足りると思います。

古典力学、解析力学

古典力学も自身のお持ちの教科書をそのまま勉強すれば良いです。質点に関する運動は大学受験の延長で対応できますので、剛体の運動に関する説明が多めに記録されている教科書だとなお良いです。

弱点克服 大学生の初等力学 改訂版 石川 裕 (著)

例題と合わせた解説の分量がちょうどよく、院試対策向きです。剛体の運動までカバーできています。学問として力学を学びたい場合は他の本もありますが、限られた院試対策の時間である観点から上記をオススメします。

解析力学については、難しいですね。あまり、例題が充実している教科書がありません。強いて言えば、下記の本になります。

解析力学の基礎, 安里光裕, 技術評論社 (シラバス対象本)

初学者向けですので、概要を素早く理解できます。ただし、もう少し踏み込んだ理解、演習が必要かもしれません。実際の問題演習を通して勉強でも問題無いですが、筆者としては下記をオススメします。

よく分かる解析力学 前野 昌弘 (著) (オススメ)

電磁気学

同じく、問題設定に癖が無いのでお持ちの教科書で事足りると思います。一応シラバス対象本を紹介します。

電磁気学の考え方  砂川 重信 (著) (シラバス対象本)

理学部に近い院試問題を出す本専攻にピッタリな教科書です。反面、磁性体、誘電体に関する説明が殆どありません。問題としては問われることが少ないものの、材料物性(固体物性)も合わせて選択する場合は困ります。

同じ砂川氏の教科書であれば、こちらの使用でも良いと思います。磁性体に関する説明も、少しはあります。

電磁気学 砂川 重信 (著)

2つの教科書ともに説明は素晴らしいですが、演習問題が少ないことが気になります。そのため、下記の演習書をかじってみることもオススメします。

電磁気学演習 (理工基礎物理学演習ライブラリ 3) 山村 泰道 (著), 北川 盈雄 (著)

電気情報系の院試だけでなく、他専攻の院試に対しても通用する内容になっています。いたずらに難しい問題ばかりが収録されているわけでは無く、電磁気学のイメージを付けるために役立つ問題が多いです。

量子力学、波動

出題傾向として、工学部院試に定番のポテンシャル障壁に対する波動関数分布の導出問題が問われることが多いです。これは、どの量子力学の教科書でも説明されている分野です。よって、どの教科書でも問題ないと考えますが、ここではシラバス対象本を紹介します。

単位が取れる量子力学ノート, 橋元淳一郎, 講談社 (シラバス対象本)

ブラッグ反射に関する事象も、本書で勉強すると良いです。この点では、波動に関する対策も1枚噛んでいます。

調和振動子の位相に関する問題も量子力学、波動の分野として出題されることがありますが、これは次回の記事で紹介する材料物性の対策で兼ねることができます。本記事では割愛します。

熱力学

熱力学

他大学、専攻で問われるように、気体分子運動論とカルノーサイクルの熱効率が多いです。

金属物理化学 (金属化学入門シリ-ズ 第1巻)(シラバス対象本)

昔の本で、中古価格が安いので購入してみて良いと思いますが、内容が難しいです。最近の参考書でも十分対策できますので、ここではオススメの本もセットで紹介します。

熱力学の基礎 第2版 I: 熱力学の基本構造 清水 明 (著)

電気系の筆者が読んでも大変分かりやすいです。問題が少ないことだけが気になりますが、教科書で導出されているところがそのまま問題になったりもするため、導出の練習をしていけば気にならないとは思います。

最後に

選択科目は、物理に関する科目が多いです。そのため、化学に関する分野の勉強よりは、物理の勉強を多めにした方が全体としてプラスになると思います。

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