下記の理想変成器結合回路のF行列を求めよ。

F行列とは

二端子対回路の一方の端子で発生する電圧
左辺は
F行列は(Fundamental matrix)の略です。上記の利点から、昔は電気回路を解くために盛んに使われていました。このため、”Fundamental”(基本的)という呼び名となっています。
F行列を求めるための操作
電圧源
- 端子2を開放
し、 の関係式を求める。 - 端子2を短絡
し、電流 の関係式を求める。 - 1.2.で求めた関係式を用い、F行列の具体的な値を求める。
Z行列、Y行列は、端子1-1’も開放したり、短絡したりしましたが、F行列に関しては端子2-2’のみ対応します。(1)式の右辺のパラメータに
なお、電流
例題

上記の変圧器結合回路のF行列を考えます。回路方程式は
第2式を変形すると
これが
(3)式を(2)の第一式に代入すると
これが
F行列の性質
行列
- 相反定理が成立するとき、
- F行列が
で表される回路を左から順に直列で接続した時、回路全体のF行列は
1.について、一応紹介しました。ざっくり申し上げて、端子1-1′,2-2’どちらから見ても回路が対称のときに成立します。ただ、問題を解くうえでは補助的なものになります。前節で申し上げた手順に則って解いた方が早いです。検算程度に使えます。
2.について、Z行列、Y行列がそうであったように、F行列においても既知の行列の組み合わせで回路全体のF行列を表現できます。
ただし、Z行列、Y行列は、足し算で表現できたのに対し、F行列は積で考えます。ここだけは混同しないようにしましょう。
解答例
理想変成器結合回路のF行列

回路は下記の素子4つで構成されている。
- 巻き数比
の理想変成器 - 端子間に直列で接続されたインピーダンス
- 巻き数比
の理想変成器 - 端子2-2’間に接続されたインピーダンス
上から順に、F行列を
このとき、F行列の性質2.により、回路全体のF行列
で表される。よって、1~4の行列を個々に求めていけば良い。
行列

まず、行列
これを(1)式と比較すると、
行列
行列

回路方程式は下記で表される。
以上より、F行列は
行列

同じく、回路方程式は
以上より、F行列は
回路全体のF行列
(8)(9)(11)(13)式を(6)式に代入すると
最後に
Z行列、Y行列など紹介してきましたが、院試で最も出やすいのはF行列になります。最優先で対策しましょう。