【京都大学大学院】情報学研究科 通信情報システム専攻 電気回路、電子回路の対策

はじめに

京大(通信情報)の電気回路、電子回路は、フェーザ回路、2端子対回路、オペアンプが出題されています。

傾向と対策方針を紹介します。

京大 情報学研究科 通信情報システム専攻 院試の全体

2022年度までの出題分野について

下記の試験科目9題から4題を選択し、解答する形式でした。試験時間は180分です。45分/1題のため、時間に余裕があります。

京大 情報学研究科 通信情報システム専攻(専門基礎A)の大問構成
  1. 線形代数、解析学(A-1)
  2. 微分方程式、複素関数、ラプラス変換(A-2)
  3. 電磁気学(A-3) ←本記事で紹介
  4. 電気回路、電子回路(A-4)
  5. 情報理論(A-5)
  6. アルゴリズム論とプログラミング(A-6)
  7. 計算機の基礎(A-7)
  8. オートマトンと言語理論(A-8)
  9. 情報数学(A-9)

電気回路は、数学に対して計算量が少なく、問題を絞りやすいです。主にフェーザ回路計算と、2端子対回路が出題されます(過渡現象と分布定数回路からの出題は無し)。ここに注力することで、学習時間が少なく、得点することができます。

ただし、電子回路は癖のある問題が多いです。ラダー型回路の出題が多く、その対策書を探す必要があります。ただし、トランジスタからの出題は無く、オペアンプの問題ばかりですので、同じく範囲は絞りやすいです。

<注意> 2023年度以降の出題について

2022年度までに対し、試験範囲が変更になりました。

今まで、電気回路、電子回路は専門基礎Aでの選択科目でしたが、専門基礎Bに移動になりました。

京大 情報学研究科 通信情報システム専攻(専門基礎A)の大問構成 2023年以降
  1. 線形代数、解析学
  2. 論理回路
  3. 情報理論
  4. 計算機アーキテクチャ
京大 情報学研究科 通信情報システム専攻(専門基礎B)の大問構成 2023年以降
  1. 数学(複素関数、フーリエ解析、微分方程式)
  2. 電磁気学
  3. 電気電子回路 ←本記事で紹介
  4. データ構造とアルゴリズム
  5. プログラミング言語
  6. 情報数学
  7. 情報通信工学(情報伝送、ネットワーク)
  8. 通信基礎論(通信工学)
  9. 電波工学(電磁波、アンテナ、伝搬)
  10. 計算機システム
  11. オートマトンとアルゴリズム論
  12. プログラミング言語処理系とOS
  13. 計算と論理

科目群が移動になっただけで、設問内容自体は2022年度までと変わりません。よって、2022年度までの入試問題の内容も踏まえながら、傾向と対策を紹介していきます。

傾向と対策

全体

最近6か年は以下の分野の出題がありました。

  • 2023年:
    電気回路:ホイートストーンブリッジの平衡条件
    電子回路:オペアンプの等価回路を用いた電圧利得の計算
  • 2022年:
    電気回路:交流回路のインピーダンス一定条件
    電子回路:反転増幅回路の特性。発振周期。
  • 2021年:
    電気回路:相互インダクタンスを持つLR回路の位相計算。用語説明。
    電子回路:ラダー型増幅回路
  • 2020年:
    電気回路:ブリッジ回路と供給電力最大測。
    電子回路:ラダー型増幅回路
  • 2019年:
    電気回路:2端子対回路の整合条件。
    電子回路:反転増幅回路のフィルタ特性。
  • 2018年:
    電気回路:2端子対回路のアドミタンス行列
    電子回路:反転増幅回路の利得計算。

電気回路は、問題集でよく見る典型問題が多いです。LとCを複素表示し、フェーザ計算することが分かっていれば、定期試験レベルの知識でも完答を狙えます。

たまに用語説明問題が出ますが、電気回路については易しい印象です。普段行っている回路計算の中で、当たり前のように使っている条件を日本語として表すことで解決するためです。

反対に、電子回路はやや難の問題が続きます。前述のように、ラダー型増幅回路の計算は工夫が必要ですし、反転増幅回路も他大に対して複雑です。

計算量が少し多いですが、キルヒホッフの法則を連立し、未知数を消していくことで答えを求める作業を素直にこなしていくことが必要です。

対策に使える参考書(電気回路)

電磁気学と同じく、電気回路も市販の教材が充実しています。わざわざ、本サイトで紹介するまでも無いですが、京大の傾向に合わせるなら。という観点で説明していきます。

電気回路理論 奥村 浩士 (著)

京大シラバスで紹介されている教科書です。ただし、昔の教科書だけあって内容が難しいです。電気回路の試験問題を解くうえではオーバーワークかもしれません。

エース電気回路理論入門 奥村 浩士 (著)

同じく、京大シラバスにて紹介されています。こちらの方が書籍として新しいです。理解の進みやすさ的に、こちらの書籍の方がオススメです。

解きながら学ぶ電気回路演習 馬場 一隆 (著), 宮城 光信 (著)

ちょうどいい難易度、解説の内容かと思います。演習書は、こちらをオススメします。

対策に使える参考書(電子回路)

オペアンプについて詳しく解説されている本ならば、どれでも構いません。

電子回路の基礎 北野 正雄 (著)

京大シラバスでの指定教科書です。レイメイ社から新版が出ているようですが、ネット検索では引っかからなかったです。調査の上、各自でご購入下さればと思います。

電子情報回路Ⅱ 樋口 龍雄 (著), 江刺 正喜 (著) (ちょっと難しい)

トランジスタ、オペアンプを利用し、少しマニアックな電子回路を紹介しています。ディジタル回路の章にて、オペアンプを使用したラダー型回路を解説されています。1章のうちの一部のため、所属する大学の図書館で調べると良いです。

他、オペアンプに関する基本的な性質から勉強しなおす際は、下記がオススメです。

等価回路でしっかり理解! 詳解 電子回路 𠮷河 武文 (著), 三木 拓司 (著)

東大の電子回路の傾向を解説する際にもお話ししましたが、等価回路をテーマに解説されています。一般的に、電子回路はどのように回路方程式を立てれば良いか分かりづらいです。そこを丁寧に解説されていますので、院試問題に対して対応する糸口を見つけられるようになります。

補足

あまり、「オペアンプの応用」という観点で記載した書籍が無いのが実情です。

それでも、ご自身の所属する環境によってはオススメできる本がもう一つあります。所属する大学の図書館で、「電子回路ハンドブック」という分厚い本(辞書)が蔵書されていれば、是非手に取ってみると良いです。オペアンプの章(8章)では、他書にはない応用的な内容を多数掘り下げています。

値段が非常に高く、amazonでも公式で販売されていないのでここでは載せません。

対策に使える他大学の問題

電気回路は、レベル的に似ている大学を紹介します。

電子回路は、オペアンプの問題が多い大学を紹介します。

分野ごとの類題 (赤字:オススメ)
  1. 電気回路:東北大、九大、神戸大
  2. 電子回路:阪大(電気電子情報通信工学専攻)、九大

東北大レベルが相応しいと考えます。東北大は、院試の試験時間が60分に短縮されたことで、問題が易化傾向にあります。これが、昨今の京大(通信情報)の電磁気学とレベルが合っているように感じます。

九大、北大も同じくらいのレベルでオススメできます。

電子回路は、確実に推せる大学、問題が少ないですが、阪大をオススメします。

2022年など、京大と似た構成のラダー型回路がされたりします。この年度だけでもチェックすることをオススメします。

最後に

電子回路が得意ならば、本分野は満点を狙えるレベルかと思います。他分野との兼ね合いもふまえながら、参考にしてくださると幸いです。

タイトルとURLをコピーしました