ある連続時間信号「s(t)」と三角関数のフーリエ変換

【問】ある連続時間信号s(t)が存在し、このフーリエ変換をS(f)と表す。このとき、s(t)cos(2πat) 及び s(t)sin(2πat)のフーリエ変換を求めよ。

はじめに

こちらの問題は、通信工学を少しでも勉強された方であれば、即答できる内容かもしれません。教科書を開けば、当然のように記載してある上式のフーリエ変換ですが、意外にもネットで調べるとあまり紹介されていないように見えます。cos(at)sin(at)を単体でフーリエ変換した記事はいくつもありましたが、s(t)が付いている場合の変換はなかなか見つけられませんでした。

そこで本記事では、今後通信工学の問題を紹介していく上で、非常に重要な考え方が含まれている標記の問題について、解き方を紹介します。

本記事を通して覚えたいこと

  1. オイラーの公式を用いて、三角関数項をexp項に分解する
  2. 周波数シフトの考え方を用いると、s(t)の具体的な式を求めないままでもフーリエ変換可能

ポイント1については、cos(at)sin(at)のフーリエ変換を計算する際にもよく使います。

まず、F[cos(at)]については、

(1)cos(at)e2πftdt

なので、オイラーの式(2)cos(at)=ejat+ejat2を用いることで、(1)式は

(3)12(ej2πat+ej2πat)ej2πftdt

と分解できるので、結果は

(4)F[cos(at)]=12(δ(fa)+δ(f+a))になります。

F[sin(at)]についても

(5)cos(at)=ejatejat2jで与えられるので、同様の計算を行うことで

(6)F[sin(at)]=12j(δ(fa)δ(f+a))

を得られます。

周波数シフトについて

S(f)のフーリエ逆変換をs(t)とすると、S(f-a)の逆変換は以下の式で表される。

(7)S(fa)e2πftdf

f=faとおくと

(8)S(f)e2π(f+a)tdf=S(f)e2πftdfej2πat=s(t)ej2πat

と変形することができました。

これは、元の信号s(t)ej2πat:周波数a分exp項として掛け算してフーリエ変換すると、変換後の信号スペクトルは、-a分移動することが分かります。

これを周波数シフトと言い、本問はこの事実を活用して解きます。

非常にざっくりとした言い回しで顰蹙を買いそうですが、フーリエ変換対象の信号に対し、exp(at)項を上乗せでかけると、計算後の信号の周波数項は、-a オフセットする。と、ひとまずは覚えても良いかもしれません。

解答例

(i)まず、s(t)cos(at)のフーリエ変換F[s(t)cos(at)]を考える。

(9)s(t)cos(at)dt=12(s(t)ej2π(fa)tdt+S(t)ej2π(f+a)t)dt

周波数シフトの性質により、

(10)F[S(t)cos(at)]=12(S(fa)+S(f+a))

(ii)次に、s(t)sin(at)のフーリエ変換F[s(t)sin(at)]を考える。同様にして

(11)s(t)sin(at)dt=12j(s(t)ej2π(fa)tdts(t)ej2π(f+a)t)dt

同じく、周波数シフトの性質より

(12)F[S(t)sin(at)]=12j(S(fa)S(f+a))

が得られる。

蛇足ですが・・・

「本記事を通して覚えたいこと」章で記載したcos(at)sin(at)のフーリエ変換も、実は周波数シフトの性質を利用しています。

cos(at)s(t)cos(at)のフーリエ変換の結果を今一度見比べてみると

(13)F[cos(at)]=12(δ(fa)+δ(f+a))

(14)F[s(t)cos(at)]=12(S(fa)+S(f+a))

です。

s(t)が付いていなくとも、cos(at)自身のフーリエ変換は、

δ(f)を周波数±a分シフトし、フーリエ逆変換していることと同義になります。

最初からここまで理解されている方ならば、標記の問題を初見で解くことも可能かもしれません。(恥ずかしながら、管理人は全くできませんでした。)

最後に

本問は、通信工学の定期試験や院試で頻出問題になります。いつしか、流れ作業で計算を行ってしまいがちですが、その裏には周波数シフトというフーリエ変換の数学的性質があることを念頭に入れながら計算しましょう。

参考文献

通信方式:守倉 正博(著) 第3章 P23 オーム社

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