A={a,b,c},B={x,y},C={1,2,3,4},D={5,6,7}とするとき、以下の問いに答えよ。
(1)AからBへの全射写像の個数はいくつか。
(2)AからCへの単射写像の個数はいくつか。
(3)AからDへの全単射写像の個数はいくつか。
写像とは
2つの集合X、Y内にあるそれぞれの要素(x,y)の対応関係を決める規則を言います。

規則は、関数で表されることが多いです。
集合
このため、下記のような例は写像になりません。

- 集合Xから集合Yへ遷移しない要素
- 集合X内の要素の遷移先が集合Yに属さない要素
- 集合X内のある要素の遷移先が集合Y内の要素複数である場合
一方で、下記の組み合わせでも写像として成立します。
- 集合Yに集合Xからの遷移先が無い要素がある
- 集合Yの各要素の遷移元に、集合X内の要素が複数存在する場合(像の衝突)
- 集合Xは空集合で、集合Yは有限集合 (関数がf=0)
全射とは
集合Xから集合Yへの写像に対し、Yの内部要素全てに遷移元の要素が存在する場合の組み合わせを言います。
数学的に述べると、下記の説明になります。
- Xの要素数
がYの要素数 以上であること。

単射とは
集合Xから集合Yに対応する写像が存在し、遷移元の要素の重複が無いことを言います。
前章「写像として存在する例」2.に該当しない写像が単射になります。

数学的には、下記の説明になります。
任意の
- Xの要素数
がYの要素数 以下であること。
なお、下記は全て同値になります。
Aの部分集合B,C:
厳密な説明は省きますが、
遷移元の要素が2つの集合に属するならば、遷移先の要素も2つの集合に対する写像に属すること。(1.の説明)
遷移元の要素が1つの集合にしか属さない場合は、遷移先も1つの集合にのみ属すること。(2.の説明)
以上2点を意味しています。
全単射とは
全射かつ単射である写像を言います。
下記のように、像の衝突は発生せず、集合Y内部の要素yそれぞれに対応する要素xも存在します。
- 集合Xと集合Yの要素数は同じ
- 集合Xの要素数がnの場合、写像の対応の個数は
個ある。
※椅子取りゲームと同じで、1つ目の要素の遷移先はn通りあるのに対し、2つ目の要素は(n-1)通りと順次減っていくため。

合成関数における写像(全射、単射、全単射)
合成関数とは
合成関数とは、2つ以上の関数を写像として組み合わせ、1つの関数として見たものになります。
合成関数の記号は
と表され、g(x)の引数xの部分にf(x)を丸々代入すると、合成関数になります。

合成関数の注意点
定義可能条件
実数→実数を写す写像
自然数→実数を写す写像
このように、合成写像
合成の順番と一致性
合成関数
より、両者は一致しない。
合成関数の結合即
定義可能な3つ以上の関数を合成するとき、下記の関係が成立します。
※
前節では、
試験では、計算しやすい関数から順に攻めていく方針が良いと思います。
合成関数を用いた写像の性質
関数
と が共に全射のとき、 も全射である と が共に単射のとき、 も単射である と が共に全単射のとき、 も全単射である
全射の証明
二つを合わせて、
なる全射の写像
単射の証明
集合X内の異なる要素:
全単射の証明
全射かつ単射であることが全単射の定義である。
よって、前節、前々節の証明を合わせると、
解答例
(1)全射写像の個数
集合AからBへ遷移するとき、遷移先の要素が重複しても良い。ただし、Bの要素でAからの遷移元が無いパターンは除外することに注目する。
考えられる例を書き下していくと下記の6通り考えられる。
:a→x,b→x,c→y :a→x,b→y,c→x :a→x,b→y,c→y :a→y,b→x,c→y :a→y,b→y,c→x :a→y,b→x,c→y
補足
集合Aの要素数をn、集合Bの要素数をm (ただし、n≧m)としたとき、全射の個数は
個存在します。
証明は、要望が多ければ追記します。
(2)単射写像の個数
Cの要素4つの中から異なる3つを選ぶ順列のため
補足
上記の式でピンとくるかもしれませんが、集合Aの要素数をn、集合Bの要素数をm (ただし、n≦m)としたとき、単射の個数は
(3)全単射の個数
集合AとDの個数はお互いに同じ。重複を許さず、一対一でマッチングさせていくので
(鳩ノ巣原理と言います。)
最後に
本問は、電通大の院試でよく出てきます。
同大学を志望される方は、是非隅々まで理解しましょう。