はじめに
本記事は、有名大学の院試解答を2年半執筆してきた管理人が作成しています。東大の第6問は、古典制御と電気エネルギー工学で構成されています。それぞれの傾向と対策方針を紹介します。
東大 電気系専攻 院試の全体
下記の試験科目6題から2題を選択し、解答します。2題合わせて150分と、時間にゆとりがあります。
その分、一つ一つの分野は他大と比較してしっかり問われます。
第6問を選択する場合、多くの勉強時間が必要です。
制御工学は古典制御のみです。しかし、電気エネルギー工学は、電気機器と電力系統工学、高電圧工学の3分野が試験範囲です。
合計4分野必要で、前提となる電磁気学、電気回路を踏まえるとそれ以上の知識が求められます。
併願先の他大学でも使用するならば選択の余地はありますが、個人的にはあまりお勧めしません。
ただし、問題の難易度は他科目と変わらず、勉強時間が十分に取れれば得点源になり得ます。
傾向と対策
全体
ここ4年は、下記の分野が出題されました。
- 2023年:
制御:ラプラス変換の計算と系の伝達関数の導出。根軌跡の作図。
電気エネルギー:3相交流と単相3線式の違い - 2022年:
制御:伝達関数の簡単化。単位ステップ応答。位相補償と偏差。
電気エネルギー:電力円線図と安定可能な相差角の範囲。 - 2021年:
制御:伝達関数の簡単化。位相補償と偏差。
電気エネルギー:直流電動機の回路計算 - 2020年:
制御:伝達関数とボード線図の作図。入力電圧からモータへの出力を模擬したシステムの伝達関数
電気エネルギー:無し
制御は、非常に計算量が多いです。完答を目指すには、40分見た方が良いです。問われる内容自体は他大学の院試と変わりません。
電気エネルギー工学は、試験範囲が非常に広いです。電力システムから出題されたり、電気機器からの出題もあります。
ただし、問題自体は簡単で、計算自体も制御に比べると易しいことが多いです。
制御工学
制御工学の基礎 大西 公平(著),堀 洋一(著)
東大の講義「制御工学第一」のシラバスで紹介されています。ただし、絶版ですので手に入れることが難しいです。
基本的に、古典制御の参考書で自分に合っているものならば、どれでも構いません。その上で、筆者は下記の本を紹介します。
自動制御理論 樋口 龍雄(著)
東北大の講義の指定教科書です。筆者はこちらを使用していましたが、非常に分かりやすかったです。他大学の院試問題を解いていても十分通用する内容でした。初学者ほど、是非手に取っていただければと思います。
大学院入試徹底対策テキスト 制御工学 森 泰親(著) (オススメ)
制御工学の院試対策問題集です。東工大、阪大の院試など、難しい問題もありますが、解説が非常に詳しいです。教科書を一通り勉強したら、本参考書で演習することをオススメします。
傾向として、与えられたブロック図の伝達関数を求め、そこから安定性の計算を行っていく問題が多いです。
ここまではオーソドックスな内容ですが、下記の問いに発展することが多いです。十分に対策を積みましょう。
電力システム工学
電力系統工学 長谷川 淳 (著)
東大のシラバスで紹介されています。(ただし、システム創成学科の内容であるため、電気系講義の内容とは違います。)
送配電の基礎 山口 純一 (著), 中村 格 (著), 湯地 敏史 (著)
演習問題が多く、コンパクトにまとまっています。院試対策だけでなく、将来の電験など、プラント技術者(電気領域)になる場合は、是非手に取りたい本です。
傾向として、電力円線図を作図し、安定性の評価を行う問題が多いです。
電験2種の2次試験、名大の院試で類題が出題されます。特に前者は誰でも入手できますので、是非対策しましょう。
他、2019年のように、調速機に関する問題も出題されます。電験2種の問題または市販の問題集で対策できます。
電気機器学
東大の指定教科書です。電気機器を院試問題として出題する大学は非常に少ないです。選択するならば、東大だけに使用するつもりで購入すると良いと思います。
他、下記の本も分かりやすいです。(管理人が使っていました。)
よくわかる電気機器 森本 雅之 (著)
少なめのページ数ですので、すぐに勉強できます。初学の場合は、是非手元にとってみると良いです。
他、意外と電験3種の問題集が使えます。ちょうどいい難易度、分量です。将来、電力関係の仕事に就きたい場合は、将来の電験勉強と兼ねて購入すると良いかもしれません。
傾向としては、直流機、誘導機、同期機に関する問題が多いです。
範囲が広いですが、電力システム工学より計算量が少ないです。よって、簡単な問題であることが多いです。上記で紹介した参考書の演習問題、電験の過去問で対策できます。
高電圧工学
たまに、絶縁破壊に関する問題が出題されます。対策としては、東大のシラバスで紹介されている下記の本を使用すると良いです。2,3章を中心に出題されます。
こちらの記事で、東大の過去問(高電圧工学範囲)を解説しています。どのような雰囲気な問題か、是非チェックしてください。
対策した方が良い分野
制御工学
2次形式に関する問題が多いですが、他大では頻出となっているボード線図も対策した方が良いです。九大がほぼ毎年出題されます。
電気エネルギー工学
試験範囲は広いですが、奇をてらった問題はあまり出題されません。前章で紹介した参考書で勉強すると合格点は十分確保できます。満点も夢では無いですが、電験三種のB問題に挑戦すると良いです。
電験HPにて問題を無料公開しています。他解説サイトでも、解法が紹介されています。
実学に近い内容で興味を持てますが、一方で他科目の勉強もあります。あまり深入りしないほうが良いかもしれません。
結論
東大 電気系院試 第6問(制御工学、電気エネルギー工学)は、試験範囲が広いです。制御の計算量も多いため、管理人としてはできれば選択したくありません。
ただ、他大を併願するうえで一緒に勉強する分野ならば一緒に選択できる分野だと思います。
内部生で選択する方が多い場合は、過去問の解答も良く出回ります。そういった環境要因も踏まえて検討することをオススメします。