試験範囲
必須科目2題+選択科目5題中2題選択による180分入試となっています。分量が多く、長丁場となっているため、難しい部類だと考えています。
本記事では、必須科目2題(アルゴリズム論、計算機アーキテクチャ)、選択科目3題(計算理論、電子回路と論理設計、数学と信号解析)を解説していきます。
なお、2028年4月入学(2027年実施入試)から試験科目が変更になることが周知されています。本記事では2027年4月入学分までの試験範囲を正として解説していきます。
※2028年度入学分の対策は、2027年になり次第追記予定です。
情報科学研究科入試の全体
下記の科目で構成されています。
試験時間は180分のため、1題当たり45分の時間配分になります。
赤字:本記事で解説
- 必須科目
- アルゴリズム論
- 計算機アーキテクチャ
- 選択科目(5題中2題選択)
- 離散構造(情報数学)
- 計算理論(オートマトンと言語理論)
- ネットワーク(情報理論)
- 電子回路と論理設計(アナログ/ディジタル電子回路)
- 数学解析と信号処理(微分方程式、応用数学、フーリエ変換、z変換)
試験時間が長いため、当然ながら分量も多いです。作業で済む問題が中心かと思えばそうでもなく、思考力を問う問題も後半によくあります。全体的に難しいと思います。
内部生は、学内講義で類題経験を積んでいるのに対し、外部生は不利だと言わざるを得ません。6~7割を目標にし、分からない問題があったとしても方針は述べるくらいの足掻きはあっても良いと思います。
院試は確証が持てませんが、大学入試における阪大の採点は、部分点をよく付けてくれることで有名です。同じ教授陣が採点することを前提に置けば、基準はそう変わらないのでは。と考えます。
対策に使える参考書、問題集
全体
最近4か年は以下の分野の出題がありました。
- 2025年:
- アルゴリズム:バブルソート、二分探索、計算量の評価
- 計算機:2の補数、floatの計算。スケジューリング
- 電子回路、論理回路:Dフリップフロップとタイムチャート。
- 数学解析と信号処理:確率密度関数と尤度計算。信号の復元。
- 2024年:
- アルゴリズム:ヒープソートと計算量の評価。二分ヒープの空欄穴埋め
- 計算機:パイプラインと計算量の評価。
- 電子回路、論理回路:漸化式と順序回路
- 数学解析と信号処理:離散フーリエ変換と窓関数
- 2023年:
- アルゴリズム:昇順ソートと探索の高速化
- 計算機:ページングとページフォルト
- 電子回路、論理回路:二端子対回路と積和最簡形
- 数学解析と信号処理:コーシーの積分定理とz変換
- 2022年:
- アルゴリズム:ハッシュと探索効率化
- 計算機:ページングと必要容量
- 電子回路、論理回路:CMOSを用いた論理回路設計、フェーザ回路
- 数学解析と信号処理:フィルタの振幅特性
- アルゴリズム論について:
他大学の院試に対して、全体的にソースコードが長いです。分量もあり、難しい部類だと思います。データを入力したときの出力を答える問題は必ず出題されますので、雰囲気である程度のソースコードの理解だと間違える可能性が高いです。愚直に、日ごろからプログラミングに親しむ必要があります。 - 計算機アーキテクチャについて:
パイプライン、ページングに関する問題が頻出事項になっています。しかし、出題内容が市販の参考書ではあまり見かけない内容で、難易度も高いです。必須科目でありながら鬼畜な構成です。 - 電子回路、論理回路について:
必須科目に対して癒し枠だと思います。典型的な問題が多いため、是非とも高得点を狙いたいものが多いです。ただし、試験時間が長いことから分量が多いです。途中の計算ミスに気を付けましょう。 - 数学解析と信号処理について:
回路と同じく標準的な問題が出題されますが、範囲が広いです。大学受験を初め、今まで慣れ親しんだ科目ですから0点になることは無いですが、高得点を狙うならば広範囲の対策が必須になります。対策の手間から、離散数学、計算理論の選択でも良いかもしれません。
信号処理は窓関数の出題が多いですが、その前にz変換をする場合が多いです。この問題は必ず押さえておきたいです。その後は誘導に乗って解いていくことが多いことから、特別な対策は不要かと思います。
アルゴリズム論の参考書
大前提として、ソースコードを読めないと手を付けられない問題が多数を占めます。教科書と言うよりはプログラミングに慣れ親しむことをオススメします。プログラミングに関しては、他サイト様で豊富に記事がありますので、本サイトでは、それを助ける教科書の紹介程度に留めます。
浅野,増澤,和田著「アルゴリズム論」オーム社 2003 (シラバス対象本)
シラバス本ではありますが、至って普通です。
ご自身で同様の教科書を持たれている場合は、それで代用が効くと思います。心配ならば購入してみる程度です。頻出分野である二分探索、ソートに関しては、前半の章でまとまった説明があります。6章には、ダイクストラ法を初めとするグラフのアルゴリズムの説明があります。ここまでは読んで見ると良いかもしれません。
演習問題に対しての解答は、ある程度詳しく書いています。他のアルゴリズム系の教科書には無い特徴です。ただし、出題傾向とはあまりマッチしておらず、分量も少ないため、何かの足しにオススメする程度です。
7章以降は、出題頻度が落ちる分野が多いですので余裕があったら見る程度で良いと思います。
計算機アーキテクチャの参考書
ディジタル回路設計とコンピュータアーキテクチャ 第2版
David Money Harris (著), Sarah L. Harris (著), 鈴木 貢 (翻訳), 天野 英晴 (翻訳), 中條 拓伯 (翻訳), 永松 礼夫 (翻訳) 翔泳社 (2017)
もう一つ、同様の題名でRISC-V版がありますが、阪大のシラバス曰く、上記の本が対象のようです。
洋書らしく、大変詳細な説明です。
演習問題の解答が無いのは気になりますが、有志による解答作成ページがネット上にありますし、今やAIに解かせることだって可能です。一昔前と違ってデメリットにならないため、オススメ度が上がりましたが、分量が多く、値段も張ることだけが最後気になります。
院試は本科目だけで決まるものではありません。他の科目との合計点で競うルールですから、深追いは禁物だと思います。
阪大特有の出題傾向に対し、効果的な対策ができるのは、やっぱり過去問しかありません。過去問を解いたうえでの補足情報的な使い方をするのが最も効率の良い勉強法だと思います。
同様の理由で、他の計算機アーキテクチャの記事で取り上げている馬場先生執筆の参考書は紹介しないでおきます。
電気電子回路の参考書
最近はフェーザ回路やCMOSしか出題されていないから、その分に限った対策をすれば良い!と言いたいところですが、過去年度を見ていると過渡現象が出題されていたりします。
難易度こそは普通ですが、広範囲の対策が必要です。勉強すべき科目が多い中負担だと思います。下記にシラバスに記載されていた教科書を紹介しますが、概要を広く浅く抑えられるものならば何でも構わないと思います。
世界一わかりやすい電気・電子回路、薮、講談社、2017
一冊で電子回路も勉強できることは良いのですが、範囲としては網羅できているわけではありません。フェーザ回路を初め、頻出範囲の基本事項は抑えられますが、過渡現象、二端子対回路までカバーできているかというと、そうではありません。
対策の熱量次第ですが、いつもオススメしている下記の本を使用すれば万全になります。ただし、出題されるのかも分からない科目に2冊も勉強するのは不合理です。自身が所属する大学の講義資料の演習問題を解くくらいの勉強でもしょうがないかもしれません。
新しい電気回路上下 松澤 昭 (著)
論理回路の参考書
計算機アーキテクチャと違い、こちらはよく見る問題の出題が多いです。よって、参考書もご自身にあったものでも問題ないですが、筆者は下記を選びます。
OHM大学テキスト 論理回路
中盤の順序回路の章まで読み込み、演習問題が解ける実力になれば、院試問題もある程度解けるようになると思います。
数学の参考書
信号処理とセットで出題されることが多いことから、複素解析に関する問題が多いです。他の記事で紹介しているように、海老原先生の演習書をやり込むことも勉強の一つですが、複素解析の対策に役立つ参考書を紹介します。
応用数学 (工学系数学テキストシリーズ)工学系数学教材研究会(編集)/上野健爾(監修) (著)
後半の章ではラプラス変換も紹介されていますが、前半を主にやり込むと良いです。演習問題の解答もしっかりしていて、分かりやすい参考書となっています。
※2025年度入試は統計学が出題されました。新傾向です。ご自身のお持ちの教科書で十分カバーできると考え、ここでは書籍を紹介しません。
尤度関数が出題されたため、電通大の入試問題が参考になると思います。
信号処理の参考書
信号処理を出題科目としている他大学の院試対策記事でもオススメしていますが、下記一択です。
新しい信号処理の教科書: 信号処理の基本から深層学習・グラフ信号処理まで 馬場口 登 (著), 中村 和晃 (著) (オススメ)
筆者が最初にオススメしてから2年が経ちましたが、色褪せない素晴らしさです。もはや、ここで批評すること自体申し訳ないレベルの教科書です。
他大学と同じく、5章(サンプリング定理)、6章(離散フーリエ変換)、7章(高速フーリエ変換)、9章(システムのz変換)が頻出になっています。演習問題も豊富ですので、ネット上に掲載されている解答と合わせて学習が可能です。
対策に使える他大学の問題
なかなかオススメできる大学は無いですが、京大の情報学研究科 通信情報システム専攻の過去問は一見の価値ありです。
阪大ほどの難易度ではないにせよ、出題範囲、内容がある程度似ています。ここでは紹介しなかった計算理論、離散数学に関しても出題されていますので、演習を積みたい際はオススメできます。

