東工大(東京科学大学) 数理・計算科学系 院試の全体
数学、計算機科学に関する様々な問題から数問を選択するルールになっています。(募集要項参照)
試験時間は210分(9:00-12:30)です。非常に長丁場です。英語はTOEICによる点数換算で総合点の16%を占めます。
2024年度入試実績
- 数学 3題中2題選択
- 線型代数
- 微分積分
- 論理学
- 選択問題 9題中3題選択
- 写像と群
- 位相空間と距離付け
- 微分方程式と境界値問題
- 線形計画問題
- 確率統計とモーメント母関数
- 確率変数と信頼区間
- オートマトンと言語理論。文脈自由記法
- 再帰関数とプログラミング
- 計算機アーキテクチャ(クロック周波数)
合計100点+英語(TOEIC)20点=120点満点
数学、計算機分野から幅広い出題があります。選択問題のため、自身の得意な科目を選択することは可能ですが、群論を中心に理学部チックな科目もあります。この辺は、工学部出身者からすると選択しづらいですので、結局所属する学科によって自ずと科目は決まってくると考えます。
試験傾向
全体
最近2か年は以下の分野の出題がありました。
- 2024年:
- 数学
- 線型代数:4×4行列の正規直交基底、カーネル
- 微分積分:2変数関数の極値
- 論理学:論理和標準形の計算
- 選択問題
- 写像と群:4×4行列の部分環の構造
- 位相空間:コンパクト距離空間上の単調減少な連続関数列
- 微分方程式:減衰項を含む波動方程式
- 線形計画:双対最適解を用いた primal の最適解導出
- 確率統計:幾何分布の確率母関数、指数分布の和のモーメント母関数
- 確率変数:対数正規分布の期待値計算、最尤推定値の導出
- オートマトン:決定性有限オートマトン(DFA)の構成、言語の正規性判定
- プログラミング:フィボナッチ数列の再帰計算、動的計画法の計算量評価
- 計算機:割込み、デッドロックの説明。優先度スケジューリングの時間チャートの作成
- 数学
- 2023年:
- 数学
- 線型代数:対称行列の固有ベクトル、階数
- 微分積分:変数変換による広義積分の収束性
- 論理学:集合の特性関数と決定可能性の定義、真偽判定
- 選択問題
- 写像と群:群の証明
- 位相空間:ウリゾーンの距離付け定理の仮定を満たすかの判定
- 微分方程式:放物型方程式の変数変換による簡単化、収束性
- 線形計画:最適解集合の凹凸性と端点を持たないデータ
- 確率統計:独立ベルヌーイ変数和の期待値
- 確率変数:指数分布の期待値・分散、最尤推定値の導出
- オートマトン:条件付きカウント制約を持つ言語の解析
- プログラミング:リスト処理プログラムの挙動解析
- 計算機:ダイレクトマップキャッシュのアドレス分解。平均命令実行数の計算
- 数学
数学(線型代数、微分積分)は、他の大問と比較してオーソドックスな出題と言った印象です。数学は、この2科目を選択し、論理学は保険として持っておく作戦で良いと思います。微分積分に難しい変数変換問題が多く、自身の対策が手薄な時に選択を検討しましょう。
選択問題は癖のある大問が多いですが、筆者としては、3.微分方程式 5.確率統計 8.プログラミング 9.計算機の選択をオススメします。理由は、参考書が多く外部受験者からしても対策がしやすいからです。
他、6.確率変数についても、5.の確率統計を対策している時に一緒に対応できる余地はあります。その他の大問は、自信があれば選択を視野に入れましょう。
目標
範囲は広いですが、試験問題は平易なものも多いので、7割目標にすると良いのではないかと思います。(6割だと他受験者のレベルもあって、負けてしまいそう。)
教科書
一部の大問(3,7,8)は、以前の記事で紹介した情報工学系の対策内容で包含できます。本記事では、情報工学系では出題されない分野を中心に教科書を紹介していきます。
大門1,2 位相と集合
これからの集合と位相 梅原 雅顕 (著), 一木 俊助 (著)
必須。難しい分野にまで手を広げて詳細説明している。6,7章はwant。1-5賞は是非
大門4 線形計画問題
数理最適化 久野 誉人 (著), 繁野 麻衣子 (著), 後藤 順哉 (著)
内容がまとまっており、院試対策は可能ですが、演習問題の量と解答があっさりし過ぎていることが気になります。ただ、プログラムの簡易ソースコードが載っているため、プログラミング形式での対策を見据えるならばこの本だと思います。シラバス図書のため、持っておいた方が良いものの、演習を重視して理解する方には下記の参考書もオススメです。
数理計画法 加藤 直樹 (著)
少し昔の本になりますが、演習問題と解答が豊富です。過去問以外にも対策したい方にオススメです。他、Pythonを用いた数理最適化書も多数あります。既にお持ちの場合は、そういった本で代用も可能かと思います。
大門5,6 確率統計
データ解析のための数理統計入門 久保川 達也(著)
個人的には微妙です。試験範囲に出そうな内容を多く説明しているが、肝心の演習問題に答えがないためです。仮説検定に関する内容が大変細かく書いているだけに残念ですが、考え方を勉強する上では購入してみるのも良いかもしれません。最近では、生成AIの解答精度も上がっていますので、利用も視野に入れましょう。
他、統計に関する本は所属の学校の講義で購入されている場合が殆どです。試験問題を解いてみて、足りないときは上記を購入してみても良いでしょう。
計算機システム 大問9
コンピュータの構成と設計 第6版 デイビッド A パターソン, ジョン L ヘネシー
洋書らしく説明が豊富ですが、他の章と同じく演習問題に答えがないです。また、院試で問われやすい箇所、問題を解く難しさもあり、学習難易度が非常に高いです。和書ならば、下記をオススメします。
コンピュータアーキテクチャ(改訂5版) 馬場敬信 (著)
他大学向けの記事でも説明しているため、今更詳細な説明は不要かもしれないです。上記の洋書ほどではないものの、各単元に対し必要な知識を和書の中では一番細かく説明しています。
400pあり、全部読み切ることは難しいですが、必要な部分を読み込むことを推奨します。

