【例題付き】直流法の概要と潮流計算

問題

下図の電力系統において、直流法を用いた潮流計算を考える。ノード3を基準とし、ノード1-2間、2-3間、3-1間の潮流$P_{12},P_{23},P_{31}[\mathrm{p.u.}]$、ノード1,2の位相角$\delta_1,\delta_2[\mathrm{rad}]$をそれぞれ求めよ。ただし、ノード間のリアクタンスは$x_{12}=0.1,x_{23}=0.2,x_{31}=0.1[\mathrm{p.u.}]$とする。

直流法とは

交流電力系統における潮流計算を直流回路に置き換えて近似計算する手法です。通常、交流回路は三角関数が存在するため、複素数や非線型方程式を解く必要があります。手計算で解くことは困難ですが、本方法を用いた近似計算により解くことが可能になります。

近似計算の条件
  • 送電線の抵抗$R$は無視
  • 電圧の大きさはノードごとに全て一定と仮定
  • ノード間の位相差が小さいこと(30度以下)
  • 有効電力のみ考える

直流法を用いる場面は、高圧の送電系統であることが多いです。この場合、発電機、変圧器によるリアクタンス$X$が支配的で、$R$の影響は無視できます。厳密には、送電ロスによる電圧降下も発生しますが、高圧系統のためその影響は無視できると仮定します。

また、位相差が小さい必要があります。なぜならば、非線形項の三角関数を$\sin \theta \sim \theta,\cos \theta \sim 1$に近似するからです。本近似が成立するためには、位相差$\theta$が小さい必要があります。

前述の通り、直流法の計算では、負荷はリアクタンスのみ考えます。リアクタンス成分と有効電力成分は複素平面上で直交することから、有効電力の消費は考えずに済みます。無効電力も考えると、リアクタンスによる消費を考慮する必要があり、計算が複雑になります。よって、有効電力のみ考えて、その分の潮流を評価します。

直流法の欠点

近似条件の裏返しですが、下記の欠点があります。気になる場面では使用できません。

直流法の欠点
  • 無効電力や電圧変動は計算できない
  • 低電圧の電力系統や抵抗成分の大きい傾向では誤差が大きくなる
  • 故障計算や過渡解析はできない

あくまでも定常解析です。間違えないようにしましょう。

計算方法

あるノードij間の有効電力のフロー$P_{ij}$は下記のように表されます。

\begin{aligned}P_{ij}=\dfrac{\delta_{i}-\delta_{j}}{x_{ij}}\end{aligned}

位相角$\delta$を電圧に見立てて$P$を電流のつもりで計算するつもりで立式していくことが重要です。

これを各ノードに流入する電力、流出する電力毎に収支を考えていけば良いです。

解答例

各フローにおける電力収支を考えます。

ノード1について:

\begin{aligned}P_1 &= P_{12} – P_{23} \\ &= \dfrac{\delta_1 – \delta_2}{x_{12}} + \dfrac{\delta_1 – \delta_3}{x_{13}}\end{aligned}

\begin{aligned}1.5 – 0 &= \dfrac{\delta_1 – \delta_2}{0.1} + \dfrac{\delta_1 – 0}{0.1}1.5 \\ &= 10(\delta_1 – \delta_2) + 10\delta_1 \\ &= 20\delta_1 – 10\delta_2 \end{aligned}

ノード2について:

\begin{aligned}P_2 &= P_{21} + P_{23}\\ &= \dfrac{\delta_2 – \delta_1}{x_{12}} + \frac{\delta_2 – \delta_3}{x_{23}}\end{aligned}

\begin{aligned}0.5 – 1.0 = \dfrac{\delta_{2} – \delta_{1}}{0.1} + \dfrac{\delta_2 – 0}{0.2}\end{aligned}

\begin{aligned}-0.5 &= 10(\delta_2 – \delta_1) + 5\delta_2 \\ &= -10\delta_1 + 15\delta_2 \end{aligned}

(2式)と(5式)により

\begin{cases}\delta_1=\dfrac{1.75}{20}=0.0875 [ \mathrm{rad}] \\ \delta_2 = \dfrac{0.5}{20}=0.025 [ \mathrm{rad}]\end{cases}

これより、各ノード間の潮流は

\begin{cases}P_{12}=\dfrac{\delta_1-\delta_2}{x_{12}}=\dfrac{0.0875-0.025}{0.1}=0.625[\mathrm{p.u.}] \\ P_{23}=\dfrac{\delta_2-\delta_3}{x_{23}}=\dfrac{0.025}{0.2}=0.125[\mathrm{p.u.}] \\ P_{31}=\dfrac{\delta_3-\delta_1}{x_{31}}=\dfrac{-0.875}{0.1}=-0.875[\mathrm{p.u.}]\end{cases}

最後に

計算方法の章で述べた式、$P_{ij}=\dfrac{\delta_{i}-\delta_{j}}{x_{ij}}$だけは忘れないようにしましょう。

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