避雷器の性質と放電電流の計算問題

問題

問1:下記のように、制限電圧$100 [\mathrm{kV}]$の避雷器がサージインピーダンス$400 [\mathrm{Ω}]$の伝送線路に接続されている。線路の開放端Bと避雷器設置点Aと文字を置く。線路の左から電圧上昇率$ 1000 [\mathrm{kV/μs}]$のサージ電圧が進行し、避雷器が動作した状況を考える。B点に生じる最大電圧を求めよ。なお、サージ電圧の進行速度は光速$c=3.0*10^{8}[\mathrm{m/s}]$と等しく、避雷器より下流の送電線における電圧降下は考えないものとする。

問2:B点の電圧が最大値に到達した時、避雷器に流れている電流値を求めよ。

避雷器とは

雷、負荷開閉などにより発生する異常電圧から電気機器を保護する装置になります。常用時(避雷器が設置されている系統電圧)ではほぼ絶縁状態で、漏れ電流はほぼ微小ですが、過電圧発生時は、低インピーダンス状態となり、過電圧により発生した電流を大地に逃がす役割を持っています。

下記のような電流-電圧特性(非線形)になっています。電流が小さい領域では電圧も上昇し、ある程度のインピーダンスを持っていますが、電流が大きい領域では電圧があまり上昇せず、低インピーダンスになることが分かります。

避雷器の種類

ギャップ付き避雷器とギャップレス避雷器がありますが、後者が主流となっています。

ギャップレスZnO酸化亜鉛型避雷器

非線形素子に酸化亜鉛(ZnO)を使用した避雷器です。従来の避雷器のように、抵抗素子に放電素子の直列ギャップを必要としないため、放電遅れが無く、構造的に簡単です。抵抗の非線形性、メンテナンス性にも優れているため、よく用いられています。

他、絶縁容器の内部を絶縁媒体で満たし、避雷器を収納した構造をがいし型避雷器と呼びます。

避雷器の特性

避雷器としての信頼性を評価するために、様々なパラメータがあります。

電気的特性
  • 制限電圧:避雷器動作時、避雷器両端部に発生する電圧
  • 放電耐量:雷電流や負荷開閉によるサージ電流を繰り返し安全に流せる能力
  • 公称放電電流:避雷器の保護性能、復帰性能を表現するための放電電流の規定値
  • 漏れ電流特性:常用時、避雷器に流れる電流

避雷器動作時、電圧は常用領域まで落とすことはできません。落とすことができる電圧レベルを制限電圧と言い、波高値で示します。避雷器周辺に接続する電気機器は、制限電圧以上の絶縁耐力を有しておく必要があります。電力系統に発生する異常電圧に対し、避雷器との組み合わせにより機器の保護レベルを決定し、全体として経済的な絶縁設計にすることを絶縁協調と言います。

避雷器は何度も効果を発揮することが求められます。このため、避雷器が障害を起こすことなく所定の回数流すことのできる電流の波高値の限度を放電耐量で表します。

その他、エネルギー吸収後の熱的安定性を検証することも必要であり、そのために実施する試験を安定性評価試験と言います。

上記、様々な言葉の定義が出てきましたが、電験でよく出てきます。院試だけでなく今後のことも踏まえて覚えておくと良いです。

解答例

入射波電圧と反射波電圧により、線路の電圧を表現する考え方で解いていきます。分布定数回路の知識を必要としますので、未履修の方はこちらの記事などが参考になると思います。

点Bに発生する電圧

点Aにおける入力波電圧、電流を$v_{1},i_{1}$とし、反射波電圧を$v_{r},i_{r}$とする。避雷器動作時の制限電圧、放電電流を$v_{A},i_{A}$とし、点Bの電圧を$v_{B}$とする。

点Bは開放されているので、透過波は生じず、点Aの電圧と等しい。

\begin{aligned}v_{A}=v_{B}\end{aligned}

キルヒホッフの法則から

\begin{cases}v_{1}-v_{r}=v_{A} \\ i_{1}-i_{r}=i_{A}\end{cases}

線路のサージインピーダンス$400 [\mathrm{Ω}]$を合わせると、オームの法則により

\begin{cases}i_{1}=\dfrac{e_{1}}{400} \\ i_{r}=\dfrac{e_{r}}{400}\end{cases}

これを(2)の第2式に代入し

\begin{aligned}\dfrac{e_{1}}{400}-\dfrac{e_{r}}{400}=i_{A}\end{aligned}

(1)と(2)の第1式と合わせて

\begin{aligned}v_{A}=v_{B}=400i_{B}\end{aligned}

B点に生じる最大電圧$v_{B}$は、避雷器の制限電圧$v_{A}=100 \mathrm{kV}$と等しい。

点Aから点Bへの進行波を考える場合、避雷器下流に位置する点Bには、制限電圧より大きい電圧が立たないことが分かりました。

問2 避雷器に流れる放電電流

問1の結果により、$v_{A}=100 \mathrm{kV}$を代入し

\begin{aligned}i_{A}&=\dfrac{100*10^{3}}{400} \\ &=0.25\mathrm{kA}\end{aligned}

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