はじめに
極値に関する問題は、解析学を院試の試験範囲とする大学で重積分の次に出題される印象です。様々な大学を見てきましたが、京大、神戸大、電通大、東京農工大で良く出題されます。
上記の大学を志望される方は、解き方の定石を身に着けることをオススメします。
この記事で覚えてほしいこと
関数\(f(x,y)\)のxにおける1階偏微分を\(f_{x}\)、yの1階偏微分を\(f_{y}\)
xの2階偏微分を\(f_{xx},\) yの2階偏微分を\(f_{yy},\) xyの順の偏微分を\(f_{xy},\) yxの順を\(f_{yx}\)とする。
以下の作業で、極値を判定できる。
- \(f_{x}=0\)かつ\(f_{y}=0\)を与える(x,y)の値を求める
- その時の\(D=\begin{vmatrix} f_{xx} & f_{xy} \\ f_{yx} & f_{yy} \end{vmatrix}>0\)のとき、極値を持つ
・\(f_{xx}<0\)のとき、極大値を取る
・\(f_{xx}>0\)のとき、極小値を取る - \(\begin{vmatrix} f_{xx} & f_{xy} \\ f_{yx} & f_{yy} \end{vmatrix}=0\)のとき、極値を取るか判別不能
- \(\begin{vmatrix} f_{xx} & f_{xy} \\ f_{yx} & f_{yy} \end{vmatrix}<0\)のとき、極値は存在しない
他サイト様でも同様の説明がありますが、本サイトでも掲示します。
中には、行列式Dの結果が正負逆になるよう要素を配置し、説明しているところもあります。この場合は、\(D<0\)のときに極値を取ります。(もっとも、本サイトでは↑の覚え方を推奨します。)
他サイトを見ていると、多項式の関数で例題を説明しているところが多いです。そこで、本サイトでは趣向を変えて三角関数で極値を考えることにします。
解答例
\(f_{x}=0,f_{y}=0\)の条件
\begin{cases}f_{x}=\cos x+\cos (x+y) \\ f_{2}=\cos y+\cos \left( x+y\right) \end{cases}
より、\(f_{x}=0,f_{y}=0\)のとき、\(\cos x=\cos y ⇔ x=y\)
\(\cos x=-\cos (x+y)\)の条件も合わせると
\((x,y)=(\frac{\pi}{3},\frac{\pi}{3}),(\pi,\pi),(\frac{5\pi}{3},\frac{5\pi}{3})\)のとき、条件成立する。
極値の判定
\begin{aligned}\begin{cases}f_{xx}=-\sin x-\sin \left( x+y\right) \\ f_{yy}=-\sin y-\sin \left( x+y\right) \\ f_{xy}=f_{yx}=-\sin (x+y) \end{cases}\end{aligned}なので
(i) \((x,y)=(\frac{\pi}{3},\frac{\pi}{3})\)のとき
\(f_{xx}=f_{xy}=-\sqrt {3} <0 , f_{xy}=f_{yx}=\frac{-\sqrt {3}}{2}\)だから
\begin{eqnarray}D=(- \sqrt {3})^{2}-(\frac{\sqrt {3}}{2})^{2}=\frac{9}{4} >0\end{eqnarray}かつ\(f_{xx}<0\)だから
極大値:\(\dfrac{\sqrt {3}}{2}*3=\dfrac{3 \sqrt{3}}{2}\)を取る。
(ii) \((x,y)=(\pi,\pi)\)のとき
\(f_{xx}=f_{xy}=f_{xy}=f_{yx}=0 \)だから、\(D=0\)
極値を取るか判別不能
(iii) \((x,y)=(\frac{5\pi}{3},\frac{5\pi}{3})\)のとき
\(f_{xx}=f_{xy}=\sqrt {3} <0 , f_{xy}=f_{yx}=\frac{\sqrt {3}}{2}\)だから
\begin{eqnarray}D=( \sqrt {3})^{2}-(\frac{\sqrt {3}}{2})^{2}=\frac{9}{4} >0\end{eqnarray}かつ\(f_{xx}>0\)だから
極小値:\(\dfrac{-\sqrt {3}}{2}*3=\dfrac{3 \sqrt{3}}{2}\)を取る。
最後に
三角関数の極値は、周期性も踏まえて等号が成立する条件を出すことが多いです。本問だけでなく、類題にもチャレンジ頂ければと思います。