【2次形式】標準形の変換問題

例題

対称行列\(A=\begin{pmatrix} 3 & 1 & 1 \\ 1 & 3 & 1 \\ 1 & 1 & 3 \end{pmatrix}\)を用いて、関数\(f(x,y,z)=3x^{2}+3y^{2}+3z^{2}+2xy+2yz+2zx\)を標準形\(f(x’,y’,z’)=Ax^2+By^{2}+Cz^{2}\)に変換せよ。

2次形式とは

斜めの楕円を楕円形に変換することです。

例題の関数は、xy項が混じっています。この影響でグラフにプロットすると斜めの形になっていますが、座標軸を適切に変換することで、x,y軸に対して対称な楕円形に変換できます。

院試では、標準形に変換した後に、関数の最大最小値、領域の面積を求めることもあります。こちらについては次回以降の記事で紹介します。

本記事で覚えたいこと

  1. \(f(x,y,z)=ax^{2}+by^{2}+cz^{2}+dxy+eyz+fzx\) 型の2次曲線は、\(\begin{pmatrix} a & \frac{d}{2} & \frac{f}{2} \\ \frac{d}{2} & h & \frac{e}{2} \\ \frac{f}{2} & \frac{e}{2} & c \end{pmatrix}\)で表すことができる。
  2. 対称行列Aを直交行列Tを用いて、\(T^{t}AT^{t}=D\) と対角化する。(ただし、Tの各列ベクトルは正規直交基底であること)
  3. \(D=\begin{pmatrix} \lambda_{1} & 0 & 0 \\ 0 & \lambda_{2} & 0 \\ 0 & 0 & \lambda_{3} \end{pmatrix}\)のとき、\(f(x’,y’,z’)=\lambda_{1}x^{2}+\lambda_{2}y^{2}+\lambda_{3}z^{3}\)と標準形変換できる。

どれも重要ですが、1番目の事項(行列の形)については是非とも押さえておきたいです。与えられた2次曲線を、\(x^{t}Ax\)で表そうとすると導出できます。

他、3番目の事項については、以下の関係式から標準形変換できます。

\(f(x,y,z)=x^{t}Ax=(Tx’)^{t}A(Tx)=x’^{t}T^{t}ATx’=x’^{t}Dx’=\lambda_{1}x^{2}+\lambda_{2}y^{2}+\lambda_{3}z^{3}\)

特に、\(x=Tx’\)で座標変換することがミソです。2式目→3式目と変更する部分に使用しています。

このように変換することで、対角行列与えられた2次形式を対角行列\(D\)を用いたシンプルなものに置き換えることができます。

解答例

与えられた対称行列\(A=\begin{pmatrix} 3 & 1 & 1 \\ 1 & 3 & 1 \\ 1 & 1 & 3 \end{pmatrix}\)は、関数\(f(x,y,z)\)の2次形式である。

よって、\(A\)を対角化し、対角行列\(D\)を求める。固有値を\(\lambda\)とすると、行列式は

\begin{align}&\begin{vmatrix} 3-\lambda & 1 & 1 \\ 1 & 3-\lambda & 1 \\ 1 & 1 & 3-\lambda \end{vmatrix} \\ &= -\lambda^{3}+9\lambda^{2}-24\lambda+20 \\ &= -(\lambda-2)(\lambda^{2}-7\lambda + 10 ) \\ &= -(\lambda-2)^{2}(\lambda-5)\end{align}

以上より、固有値は\(\lambda=2\)(重解)、\(5\)

(i)\(\lambda =2\)のとき、固有ベクトルは、\(x+y+z=0\)より、\(p_{1}=\begin{pmatrix} -1 \\ 0 \\ 1 \end{pmatrix}, p_{2}=\begin{pmatrix} -1 \\ 1 \\ 0 \end{pmatrix}\)

\(p_{1}・p_{2}≠0\)より、正規直交基底にすることを考える。

まず、\(p_{1}\)を単位ベクトル\(v_{1}\)に変換すると、\(v_{1}=\begin{pmatrix} \frac{-1}{√2} \\ 0 \\ \frac{1}{√2} \end{pmatrix}\)

次に、\(v_{1}\)の直交行列\(u_{2}\)を考える。グラムシュミットの直交化法より

\begin{align}u_{2}&=p_{2}-(p_{2}・v_{1})v_{1} \\ &=\begin{pmatrix} -1 \\ 1 \\ 0 \end{pmatrix}\cdot \left( \begin{pmatrix} -1 \\ 1 \\ 0 \end{pmatrix}\cdot \dfrac{1}{√2}\begin{pmatrix} -1 \\ 0 \\ 1 \end{pmatrix}\right) \cdot \dfrac{1}{√2}\begin{pmatrix} -1 \\ 0 \\ 1 \end{pmatrix} \\ &=\begin{pmatrix} -1 \\ 1 \\ 0 \end{pmatrix}-\dfrac{1}{2}\begin{pmatrix} -1 \\ 0 \\ 1 \end{pmatrix} \\ &=\begin{pmatrix} \frac{-1}{2} \\ 1 \\ \frac{1}{2} \end{pmatrix} \end{align}

これを単位ベクトルにすると、\(v_{2}=\dfrac{1}{√6}\begin{pmatrix} -1 \\ 2 \\ -1 \end{pmatrix}\)

(ii)\(\lambda =5\)のとき、固有ベクトルは、\(\begin{pmatrix} 1 \\ 1 \\ 1 \end{pmatrix}\)で、単位ベクトル\(v_{3}=\begin{pmatrix} \frac{1}{√3} \\ \frac{1}{√3} \\ \frac{1}{√3} \end{pmatrix}\)になる。

\(v_{1}・v_{2}=v_{2}・v_{3}=v_{3}・v_{1}=0\)より、それぞれの列ベクトルは正規直交基底である。

よって、\(T=\begin{pmatrix} \frac{-1}{√2} & \frac{-1}{√6} & \frac{1}{√3} \\ 0 & \frac{2}{√6} & \frac{1}{√3} \\ \frac{1}{√2} & \frac{-1}{√6} & \frac{1}{√3} \end{pmatrix}\)とすると

\(\begin{pmatrix} x \\ y \\ z \end{pmatrix}=T\begin{pmatrix} x’ \\ y’ \\ z’ \end{pmatrix}=\begin{pmatrix} \frac{-1}{√2} & \frac{-1}{√6} & \frac{1}{√3} \\ 0 & \frac{2}{√6} & \frac{1}{√3} \\ \frac{1}{√2} & \frac{-1}{√6} & \frac{1}{√3} \end{pmatrix}\begin{pmatrix} x’ \\ y’ \\ z’ \end{pmatrix}\)に変換できる。

また、対角行列\(D=\begin{pmatrix} 2 & 0 & 0 \\ 0 & 2 & 0 \\ 0 & 0 & 5 \end{pmatrix}\)だから、

\(f(x’,y’,z’)=2x’^{2}+2y’^{2}+2z’^{2}\)に変換できる。

最後に

2次形式の標準形変換のみを考えるならば、わざわざ\(x=Tx’\)の座標変換内容について、解答例で言及する必要は無いと思います。

では、なぜ本記事の解答例で記載したのでしょうか? 答えは、次の記事で紹介する2次曲線の最大最小値問題を解くうえ布石にしたかったためです。

また、求めた固有ベクトル\(p_{1}、p_{2}\)が最初から直交していれば良かったですが、本問はそうではなかったです。一癖あり申し訳ありません。グラムシュミットの直交法を用いて正規直交基底に変換することができます。

追記(発展問題)

下記の記事で、2次形式した楕円の最大値、最小値、領域の面積を求める問題を紹介しています。

おそらく、院試でこれ以上難しい問題は出てこないと思います。

最難関に挑戦する意味で、是非確認してください。↓

タイトルとURLをコピーしました