フーリエ級数展開、フーリエ変換を利用した無限級数和、広義積分

【問1】\(f(x) = \cos (ax)\)のフーリエ級数展開を利用し、以下の無限級数和を求めよ。
\begin{eqnarray}\sum ^{\infty }_{n=1}\frac{1}{4n^{2}-1}\end{eqnarray}

【問2】式(2)のフーリエ変換の結果を利用し、式(3)の積分値を求めよ。
\begin{align}f\left( x\right) =\begin{cases}\dfrac{1}{2}x+1 \left( -2\leq x\leq 0\right) \\ \dfrac{1}{2}x+1\left( 0\leq x\leq 2\right) \end{cases} \\ \int _{-\infty }^{\infty }\left( \dfrac{\sin x}{x}\right) ^{2}dx\end{align}
ただし、以下の公式を利用して良い。
\begin{eqnarray}F\left( \omega \right) =\dfrac{1}{\sqrt{2\pi }}\int _{-\infty }^{\infty }f\left( x\right) e^{-j\omega x}dx \\
f\left( x\right) =\dfrac{1}{\sqrt{2\pi }}\int _{-\infty }^{\infty }f\left( \omega \right) e^{j\omega x}d\omega \end{eqnarray}

はじめに

与えられた関数のフーリエ級数展開を求め、その結果を利用し、ある無限級数の和を求めるパターンの問題は院試によく出ます。

フーリエ変換、ラプラス変換の場合でも同様の出題がされることがありますが、それらのパターンは後日紹介します。

解法の定石手段

どのような級数展開、変換方法でも、以下の操作を行うことで求めたい値が出てくることが多いです。

級数展開(変換)後の式に対し、ある値を代入することで、求めたい式の形に近づける。

解答例(問1 フーリエ級数展開)

まず、フーリエ級数展開をします。

\begin{split}a_{0}&=\frac{2}{\pi }\int ^{\pi }_{0}\cos \left( ax\right) dx\\ &=\frac{2}{\pi a}\left[ \sin \left( ax\right) \right] _{0}^{\pi }\\&=\frac{2\sin \left( a\pi \right) }{\pi a}\end{split}

\begin{split}a_{n}&=\frac{1}{\pi}\int _{0}^{\pi }\cos \left( ax\right) \cos \left( nx\right) dx \\ &=\frac{1}{\pi }\int ^{\pi }_{0}\left( \cos \left( a+n\right) x +\cos \left( a-n\right) x \right) dx\\ &=\frac{1}{\pi }\left( \left[ \frac{\sin \left( a+n\right) x}{a+n}\right] _{0}^{\pi }+\left[ \frac{\sin \left( a-n\right) x}{a-n}\right] _{0}^{\pi }\right) \\ &=\frac{1}{\pi }\left( \frac{\sin \left( a+n\right) \pi }{a+n}+\frac{\sin \left( a-n\right) \pi }{a-n}\right) \end{split}

加法定理より

\begin{split}\sin ( a+n) x&=\sin a\pi \cos n\pi +\cos a\pi \sin n\pi \\ &=\sin a\pi ( -1) ^{n}\end{split}

\begin{split}\sin \left( a-n\right) \pi &=\sin a\pi \cos n\pi -\cos a\pi \sin n\pi \\ &=\sin a\pi \left( -1\right) ^{n}\end{split}

の関係があるので、\(a_{n}\)は

\begin{split}a_{n}&=\frac{1}{\pi }\left( \frac{\sin a\pi \cdot \left( -1\right) }{a+n}\frac{n}{1}\frac{\sin a\pi \cdot \left( -1\right) ^{n}}{a-n}\right) \\ &=\frac{1}{\pi }\frac{2a\sin a\pi }{a^{2}-n^{2}}\left( -1\right) ^{n}\end{split}

と書けます。

\(f(x)=\cos(ax)\)は奇関数のため、\(b_{n}=0\)

これより、\(f(x)\)のフーリエ級数展開は、

\(f(x) =\frac{\sin a\pi }{\pi a}+\sum ^{\infty }_{n=1}\frac{2\sin a\pi }{\pi \left( a^{2}-n^{2}\right) }\left( -1\right) ^{n}\cos \left( nx\right) \tag{1} \)

と表すことができます。

式(1)から、\(\sum ^{\infty }_{n=1}\frac{1}{4n^{2}-1} (2)\)に近づけるためには、どのような値を代入すれば良いか考えます。

値を代入し、求めたい無限級数和に近づける

まず、\(\sum\)を持っている第2項に注目します。

かっこ内の分母\((a^{2}-n^{2})\)を、\((4n^{2}-1)\)に近づけるための数値の代入を考えます。

nは(2)式にも出てきますので、何か値を代入するには不適当です。

よって、aに何かの値を代入することを考えます。

\(a=1/2\)を代入し、分数を整理すれば、\(1-4n^{2}\)を得られ、あとは符号の整理で\(4n^{2}-1\)になることが分かります。

次に、元の関数\(f(x)=\cos(ax)\)に注目します。

(2)式には\(\cos\)項が無いことから、こちらにも特殊な値を代入し、別の表現にすることを考えます。

\(a=1/2\)が決定していることから、\(\cos(\frac{x}{2})\)を考えます。

\(x=\pi\)を代入することで、上記の式は =0となることが分かります。

また、(1)式の第2項は、\(\cos(nx) = (-1)^{n}\)になるため

\begin{split}0=\frac{2}{\pi }+\sum ^{\infty }_{n=1}\frac{4}{\pi \left( 1-4n^{2}\right) }\end{split}

となります。

あとは、これを整理することで

\begin{split}\sum ^{\infty }_{n=1}\frac{1}{\left( 4n^{2}-1\right) }=\frac{1}{2} \end{split}

を求めることができました。(解)

解答例(問2 フーリエ変換)

基本的な方針は、問1と変わりません。まず、関数f(x)をフーリエ変換します。

\begin{align}F\left( \omega \right) =\dfrac{1}{\sqrt{2\pi }}\int _{-2}^{0}\left( \dfrac{1}{2}x+1\right) dx+\dfrac{1}{\sqrt{2\pi }}\int _{0}^{2}\left( -\dfrac{1}{2}x+1\right) dx \end{align}

\(f(-x)=f(x)\) より、\(f(x)\)は偶関数だから、\(\exp(i \omega x)\)項は、cos成分のみ考えれば良い。

\begin{align}F\left( \omega \right) &=\dfrac{1}{\sqrt{2\pi }}2\int _{0}^{2}\left( \dfrac{1}{2}x+1\right) \cos \omega xdx \\ &=\dfrac{1}{\sqrt{2\pi }}\int ^{2}_{0}\left( -x\cos \omega x+2\cos \omega x\right) dx \end{align}

部分積分を用いて計算を進めていくと

\begin{aligned}(7)&=\dfrac{1}{\sqrt{2\pi }}\left[ -x\dfrac{\sin \omega x}{\omega }\right] ^{2}\ +\dfrac{1}{\sqrt{2\pi }}\int ^{2}_{0}\dfrac{\sin \omega x}{\omega }dx+\dfrac{1}{\sqrt{2\pi }}2\int ^{2}_{0}\cos \omega xdx\\ &=\dfrac{1}{\sqrt{2\pi }}-2-\dfrac{\sin 2\omega }{\omega }-\dfrac{1}{\sqrt{2\pi }}\dfrac{1}{\omega ^{2}}\left[ \cos \omega x\right] _{0}^{2}+\dfrac{1}{\sqrt{2\pi }}2\dfrac{\sin ^{2}\omega }{\omega } \\ &=-\dfrac{1}{\sqrt{2\pi }}\dfrac{1}{\omega ^{2}}\left( \cos 2\omega -1\right) \\ &=\dfrac{2}{\sqrt{2\pi }}\dfrac{\sin ^{2}\omega }{\omega ^{2}} \end{aligned}

以上のフーリエ変換結果が得られた。これをフーリエ逆変換すると

\begin{eqnarray}f\left( x\right) =\dfrac{2}{2\pi }\int ^{\infty }_{-\infty }\dfrac{\sin ^{2}\omega }{\omega ^{2}}e^{i\omega x}d\omega\end{eqnarray}になる。

値を代入し、求めたい広義積分値に近づける

これに、\(x=0\)を代入すると、\(f(0)=1\)なので

\begin{aligned}\dfrac{1}{\pi }\int _{-\infty }^{\infty }\left( \dfrac{\sin \omega }{\omega }\right) ^{2}d\omega = 1 \\ \int _{-\infty }^{\infty }\left( \dfrac{\sin \omega }{\omega }\right) ^{2}d\omega =\pi \end{aligned}

\(\omega\)を\(x\)に置き換えることで、求める積分結果は\(\pi\)であることが分かった。

最後に

このタイプの問題は、基本的に慣れだと考えています。
大学受験でも、数Ⅲの範囲の問題を解くときは、複雑な式変形の練習を沢山したと思います。
今後、類題を紹介していく予定ですので、是非ともパズル感覚で解いて下さると幸いです。

参考文献

電子情報系の応用数学:田中 和之(著) 林 正彦(著) 海老澤 丕道(著) P24

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