【2次形式】標準形の変換問題(応用編)

問題

対称行列A=(311131113)を用いて、関数f(x,y,z)を以下のように変換した。(1)f(x,y,z)=3x2+3y2+3z2+2xy+2yz+2zx(2)f(x,y,z)=2x2+2y2+5z2

(1)x,y,zの取りうる値の関係がx2+y2+z2=1であるとき、元の関数f(x,y,z)の取りうる値の最大値、最小値を求めよ。
(2)x,y,zの取りうる領域Dが、D={(x,y,z)|x2+y2+z21}であるとき、元の関数f(x,y,z)が取りうる体積を求めよ。

ただし、変換行列を、T=(12161302613121613)とする。

はじめに

行列の2次形式に関する問題の続きです。前回は、与えられた2次形式の関数を楕円形に変換しました。

本記事では、x2+y2+z2=1の条件の下、関数f(x,y,z)が取りうる最大、最大値について考察します。最後に、楕円形が囲む領域を関数に代入した時の面積を求めます。

本記事で覚えたいこと

座標系(x,y,z)(x,y,z)の変換行列

(3)(xyz)=T(xyz)を用いることがキーポイントになります。

最大、最小問題

  1. 標準形に変換後の関数f(x,y,z)で最大、最小を与える(x,y,z)を求める。
  2. (3)式に求めた(x,y,z)を代入。これを解くことで、(x,y,z)領域に逆変換する。

最大、最小値を求めやすい座標系(x,y,z)で値を求め、それを変換行列を用いて元の座標系に戻す方針で答えを求めます。

領域の面積(体積)を求める問題

  1. 楕円体の体積の公式(V=43πabc)を用いて、座標変換後の関数f(x,y,z)の体積を求める
  2. 座標変換前後の基本ベクトル(x,x’,y,y’,z,z’)で、長さが変わっているものがあるかチェック。
  3. 正規直交基底の場合は基本ベクトルの長さが変わらないので、1.の算出結果が座標変換前の関数に対しても使える。

1.の公式を知っているかが、この問題を解く可能性を左右します。

媒介変数表示などを使えば知っていなくても解けるはずですが、当然計算量が多くなります。

そこで、変換行列を使用すると楕円になることが予想できます。これを利用することで、楽に計算することができます。

解答例

(1)最大、最小値問題

x2+y2+z2=1が、座標変換後の(x,y,z)で取りうる値の関係式を考える。

問題で与えられた変換行列Tより、以下の関係式を導ける。

(4){x=x2y6+z3y=0+26y+z3z=x2y6+z3

これをx2+y2+z2=1に代入すると、x2+y2+z2=1となり、元の関係式と同じになる。

※正規直交基底なので、変換後も同じ関係式になります。不安ならば、検算してみると良いかもしれません。

x2+y2=1z2(2)式に代入すると、以下のようになる。

(5)(2)=2(1z2)+5z2(6)=2+3z2

最大、最小を求めるには、zの取りうる値に注意すれば良く

(x,y,z)=(0,0,±1)(x,y,z)=(±13,±13,±13)のとき、最大値5

(x,y,z)=(cosθ,sinθ,0)x+y+z=0)のとき、最小値2

※x+y+z=0の関係を導くには、(x’,y’,z’)それぞれの値を(4)式に代入すればよいです。

(2)面積(体積の計算問題)

前節により、x2+y2+z21を座標変換すると、同じくx2+y2+z21になることが分かる。よって、座標変換後の変数x,y,zの取りうる領域は、変換前と変わらない。

また、変換前後の基本ベクトル(x,x’,y,y’,z,z’)は両方正規直交基底であるため、変換後の関数で求めた体積は、変換前の関数の体積と一致する。

変換後の関数はf(x,y,z)=2x2+2y2+5z2であるため、これを楕円体の公式に適用できる形に変形する。

x2(12)2+y2(12)2+z2(15)21で表せるため、求める体積V

(7)V=43π121215=2π35

ただし、楕円体の取る範囲は、(12x12),(12y12),(15z15)

すなわち、x2+y2+z21の取りうる範囲 (1x1),(1y1),(1z1)の範囲内である。

最後に

京都大学が、本問の類題を院試で出題したことがあります。他、東北大学で2次形式の標準形変換の出題をしたことがあります。

両者の大学を受験される方は、是非チェックしてください。

私が知りうる限りで解説したつもりですが、語弊がある内容もあるかもしれません。その際は、お問い合わせにてご指摘くださると幸いです。

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