超電導を用いたエネルギー貯蔵方法と計算問題

(1)次のそれぞれのエネルギー貯蔵装置について、貯蔵されるエネルギー形態も含めて、貯蔵方法の概要を説明しなさい。
(1-1)フライホイール
(1-2)SMES

(2)超電導エネルギー貯蔵装置にエネルギーを貯蔵する。装置内の超電導コイルのインダクタンスは5Hで、流れる電流Iが図1のように時間変化するとする。このときのコイル端子間の電圧V、コイルへの供給電力P、コイルの貯蔵エネルギーW、それぞれの時間変化を図示せよ。

神戸大学大学院 電気電子工学専攻 2022問題D 2021問題E より抜粋

超電導とは

物体を極低温まで冷やすことで、電気抵抗が0になる現象です。

全ての物質が超電導を起こすわけではなく、一部の物質が超電導を発現します。

このような物質のことを超電導体と言います。

物質ごとに超電導を発現する温度も異なり、温度領域ごとに下記2種類に分けられます。

歴史的に、超電導状態を発現する物質の温度が徐々に上がってきています。

低温超電導体

絶対零度(-273℃)近くまで冷却することで超電導状態を発現する物質を言います。

水銀(Hg)や鉛(Pb)などが該当し、金属系超電導体と呼ばれています。

冷却するためには、高価な液体ヘリウムを使用する必要があります。

高温超電導体

-200℃前後で超電導状態を発現する物質を言います。常温に対し小さい温度であることに変わりないですが、低温超電導体と比較して高い温度であることから、”高温”と呼ばれています。

-200℃の冷却であれば、液体ヘリウムは不要となり、液体窒素で実現できます。

冷却コストを大幅に低減できるため、実用化が期待されています。

低温超電導体は単体の金属であることが多いです。一方で、高温超電導体はベースとなる金属に酸化銅などをドープした酸化物超電導体であることが多いです。

超電導体の適用現場 (一例)

超電導ケーブル

超電導をケーブルとして利用できれば、従来の銅線に対し送電ロスを低減できます。

欠点としては、超電導体を冷やすための冷却システムの構築が難しいことです。

ケーブルのため、kmオーダーの長さを冷却する必要がありますが、冷媒を流すためのポンプの配置に苦労します。

初めは圧力高く冷媒を押し出したとしても、圧力損失(圧損)により冷媒の持つ圧力が減少していきます。

圧力が小さくなると冷媒が流れなくなることから、冷却できる長さに限りがあります。

また、直流成分の抵抗値は0ですが、交流成分の損失(渦電流損失、ヒステリシス損失)は発生します。よって、変動電流を印可する使い方では損失が発生します。

以上のように、制約はありながらも超電導体には”送電”の用途が期待されています。

他、抵抗値0である性質を期待し、蓄電池としての役割も期待されています。

これを解答例でみていきます。

解答例

(1-a) フライホイール

磁気の力で回転体を浮上させ、回転エネルギーにてエネルギーを貯蔵する方式です。

特に、磁気を発生させるコイルを超電導化し、超電導コイルとすると非接触で浮上することができます。これにより、摩擦によるエネルギー損失を低減できます。

回転体の慣性モーメントを\(I\)とすると、エネルギーEは

\begin{aligned}E=\dfrac{1}{2}I \omega^{2}\end{aligned}で貯蔵します。

なお、実際にフライホイールを使用する際は、流体による抵抗を低減するため、真空の領域で使用します。

(1-b) SMES

超電導磁気エネルギー貯蔵装置(Superconducting Magnetic Snergy Storage)の略です。

超電導線を巻いたコイルに電流を流し、磁気エネルギーとして貯蔵する装置です。

通常のコイルの場合、抵抗\(R\)を持っているため、電流を流し続けるとジュール熱によるエネルギー損失が発生します。このため、エネルギー貯蔵には不適となります。

一方で、SMESの場合、貯蔵エネルギーは\(E=\dfrac{1}{2}LI^{2}\)で表され、抵抗を持ちません。

よって、理論上半永久的に貯蔵可能となっています。

(2) SMESの磁気エネルギー

まず、(t=6s)のときのエネルギーEについて、(1-b)より

\begin{aligned}E=\dfrac{1}{2}*5*10*10=250[J]\end{aligned}

電流の2乗に比例するため、\(1<t<6\)の領域では2次関数的に上昇する。

次に電圧\(V\)について、電磁誘導の法則より\(V=L\dfrac{dI}{dt}\)だから

\begin{aligned}V=5*2=10[V] \quad (1<t<6) \\ V=0[V] \quad otherwise\end{aligned}

最後に、供給電力Pについて、\(P=VI\)の関係により、下記で図示できる。

最後に

超電導体は、ケーブルかコイルにて使用することが多いです。

  • ケーブルの場合:損失少なく電力を送電すること。
  • コイルの場合は、電力貯蔵などを目的とし、大きな磁場を手に入れること。

以上を覚えておくと、今後の役に立つかもしれません。

参考文献

電気エネルギー工学:八坂 保能(編著) P116,117

タイトルとURLをコピーしました