単相変圧器A,Bの並列運転を考える。A,Bそれぞれの定格出力と百分率インピーダンス降下は
変圧器の並行運転とは
読んで字のごとく、複数の変圧器で負荷に電力を供給する運転方法を言います。1台の変圧器では容量が足らない時に実施します。変圧器をただ複数接続するだけなのでは。とシンプルに思われるかもしれませんが、実際には下記の運転条件を満たす必要があります。
変圧器の並行運転条件

- 巻き数比、定格電圧が等しいこと。
- 一次側と二次側の極性が一致していること。
- インピーダンスが容量に逆比例すること。
- リアクタンスと巻線抵抗の比が等しいこと。
1.について、電圧に差が発生すると循環電流が流れ、変圧器の利用率が低下します。
2.について、極性が不一致の場合でも循環電流が流れます。短絡状態になるため、変圧器巻線が焼損する危険性があります。
3.について、逆比例の関係に無いと、各変圧器が容量に比例して負荷分担できなくなります。
4.について、比が不一致の場合、取り出せる電力が各変圧器の出力の和よりも小さくなります。
また、三相変圧器の場合は、上記1~4の条件に追加して下記5.6も必要になります。
5.角変位が等しいこと
6.相回転が等しいこと
5.角変位とは、一次と二次の線間電圧の位相差が等しいことを言います。不一致の場合は上記1.の事象が発生します。
6.は、三相交流の回転が逆になった場合、2.の事象が発生し、焼損のリスクがあります。
並行運転時の分担容量
変圧器Aと変圧器Bを並行運転することを考えます。それぞれの%Zを
分子が左辺の添え字と逆になっていることに注意しましょう。これは、電流の分流の計算と同じ考え方で上記のようになっています。
解答例
まず、変圧器Aの
変圧器Aを30kVAで利用したときの
これを(1)式に代入する。定格出力を超えない範囲で最大の負荷分担を考えるので、変圧器A,Bどちらかは定格出力と同じになる。変圧器A,Bのそれぞれの定格出力を与える共通の負荷容量の値に対しmin取りをすれば良いので
第1式の結果:30kVA、第2式の結果:45kVA より、第1式の結果を優先し、共通の負荷容量は
この時の
※
最後に
(1)式と、%Zの基準容量を合わせることさえ覚えておけば、電験三種レベルの問題ならば解くことが出来ると思います。知識問題の場合は、前段の説明部分(並列運転条件)を問われることが多いので、合わせて覚えておきましょう。