【電気回路】相加相乗平均を用いた最大消費電力の算出

電気回路

2025.03.24

問題

下記の電気回路を考える。抵抗 $R$ で消費する電力を最大化するための条件を求めよ。

電気回路における消費電力
1. 最大消費電力の計算方法
解答例
1. 方法1.微分を使用する場合
2. 方法2.相加相乗平均を用いる場合
最後に

電気回路における消費電力

抵抗Rに電流Iが流れている時、下記の式で表されます。

$\begin{matrix} (1) & \begin{array}{r} P = R I^{2} \end{array} \end{matrix}$

本問の電気回路を見ると、抵抗 $R_{1}$ から右では $R_{2}$ と $R$ に分かれています。

よって、電圧源から流れる電流は、この2つの枝に分岐します。解答に際しては、抵抗 $R$ に流れる電流値を求めてから、変数 $R$ を含む消費電力の式を立てる必要があります。

最大消費電力の計算方法

以下2つの方法があります。

最大消費電力の計算方法

変数 $R$ で微分し、増減表を元に最大値を与える $R$ の条件および結果を算出
相加相乗平均を用いる方法

方法1.は任意の電気回路に対して適用できます。高校数学の数Ⅲの微分と行っていることは変わりません。微分の公式さえ覚えていれば解くことができます。

反面、計算量が多くなりがちなデメリットもあります。計算ミスしなければ良いですが、限りある試験時間では厳しいです。

一方で、式によっては方法2.を使えることが有ります。相加相乗平均については、下記の関係になります。

相加相乗平均の関係

変数a,bに対し、下記の大小関係がある。(等号成立はa=bのとき)

$\begin{matrix} (2) & \begin{array}{r} a + b ≧ 2 \sqrt{a b} \end{array} \end{matrix}$

この関係を利用します。変数Rを含む項をa,bの2項に分けられるときに使用できます。等号成立時、最小値になる表記ですが、逆数(分母側)だったとすると最大値になります。

上記の考え方を利用し、少ない計算コストで最大消費電力を求めていきます。

解答例

方法1.で解く方法と方法2.で解く方法を比べてみます。

まず、両者の方法で共通して行うことは、抵抗Rで発生する消費電力の式を立てることです。各論に移る前に、これを先にやります。

抵抗に流れる電流 $I_{R}$ は

$\begin{matrix} (3) & \begin{aligned} I_{R} & = \frac{E}{R_{1} + \frac{R R_{2}}{R + R_{2}}} \frac{R_{2}}{R_{2} + R} \\ = \frac{R_{2} E}{R_{1} (R_{2} + R) + R R_{2}} \end{aligned} \end{matrix}$

よって、求める消費電力 $P$ は

$\begin{matrix} (4) & \begin{aligned} P & = R I_{R}^{2} \\ = \frac{R (R_{2} E)^{2}}{{R_{1} (R_{2} + R) + R R_{2}}^{2}} \end{aligned} \end{matrix}$

方法1.微分を使用する場合

こちらは正攻法です。方法2.が本記事で主張したいことですが、対比のために記載します。

(4)式を $R$ で微分し

$\begin{matrix} (5) & \begin{aligned} \frac{d P}{d R} & = \frac{{R_{1} (R_{2} + R) + R R_{2}}^{2} - 2 R R_{1} (R_{2} + R) + R R_{2} (R_{1} + R_{2})}{{R_{1} (R_{2} + R) + R R_{2}}^{4}} R_{2} E^{2} \end{aligned} \end{matrix}$

Rが0のとき、上式は正となり、Rを増加させると消費電力Pも増加する。分子が0になるとき、最大値を取る。

$\begin{matrix} (6) & \begin{array}{r} R_{1} (R_{2} + R) + R R_{2} = 2 R (R_{1} + R_{2}) \end{array} \end{matrix}$

$\begin{matrix} (7) & \begin{array}{r} R = \frac{R_{1} R_{2}}{R_{1} + R_{2}} \end{array} \end{matrix}$

･･･だいぶ端折った計算ですが、それでも長くなりました。ただ、安定して解くことはできます。

方法2.相加相乗平均を用いる場合

(4)式を変形すると

$\begin{matrix} (8) & \begin{aligned} P & = I_{R}^{2} \\ = \frac{(R_{2} E)^{2}}{{R (R_{1} + R_{2})^{2} + 2 (R_{1} + R_{2}) R_{1} R_{2} + \frac{(R_{1} R_{2})^{2}}{R}}} \end{aligned} \end{matrix}$