電場の無い一様の磁場中
(1)その時の荷電粒子の運動について考えよ。なお、荷電粒子の電荷量は
(2)y成分を持たない電場

荷電粒子とは
読んで字のごとく、電荷量
簡単化のため、一般的に、一つの粒子のみについて論じることが多いです。本問も、一つだけの粒子に対する現象を深堀していきますが、数が増えても同じ傾向が出るため、一般性は損なわれません。
ローレンツ力と荷電粒子の運動
ローレンツ力とは、荷電粒子に働く電磁力を言います。
磁場ベクトルを
となり、荷電粒子の運動方向と磁場の外積方向に力がかかります。
図示すると下記のようになり、円運動をし続けることが予想できます。

円運動をするときの実際の半径や、中心座標に関して問(1)で定量的に考えていきます。
また、電場
磁場の成分は円運動に寄与し、電場の成分は一定の方向に移動し続けると予想できます。これは(2)で考えます。
解答例
基本的に、微分方程式を解くことで解決します。
(1)電場が無い状態での運動
運動方程式は
磁場はz方向で、荷電粒子は、x,y方向の運動をする。このため、上式をx,y,zの3方向に分解すると
これをラプラス変換すると、
第二式より、
これをラプラス逆変換すると
次に、y方向の速度
これをラプラス逆変換する。
(9)式、(13)式が求める荷電粒子の運動(速度)である。
位置に関しては、それぞれ時間tで積分し、初期条件(x,y)=(0,0)を代入すれば良く
上式を三角関数項とその他の項に分けて2乗すると
上記、2つの式を足し合わせる。
よって、荷電粒子は(x,y)=(0,-vo/ω)を中心とする半径
一定速度の円運動を継続するため、エネルギー的に増減無いことが分かります。
ラーモア半径(ラーマ半径)
前節により、荷電粒子は一定の半径
で円運動をし続けることが分かりました。これをラーモア半径と言います。
式に注目すると、下記の性質があることが分かります。
荷電粒子の各パラメータに対し、下記の依存性がある。
- 質量が大きいとき:半径が大きくなる。
- 初期速度が高いとき:半径が大きくなる。
- 電荷量が大きいとき:半径が小さくなる。
- 磁場が大きいとき:半径が小さくなる。

イメージになりますが、運動量mvが大きいほど、遠心力が大きくなるため、半径rが大きくなる方向になります。
一方で、電荷量や磁場が大きいときは、半径を大きくせずとも向心力を確保できるため、半径rは小さくなる方向に働きます。
(2)電場がある状態の荷電粒子の運動
計算が難しくなりますが、x,z方向の電場
y方向に電場はかけていないので、y方向の運動方程式は変化せず、(4)式を参考にすると
となります。第一式、第三式が変化します。
第三式は独立になっているので、そのまま時間で積分します。z方向の速度
になります。(z方向の初期速度は0である前提です。)
一方で、第一式と第二式に関して考えます。(18)式を微分して
(20)式の右辺に(18)式を代入する。
2階微分し、右辺に
よって、下記のような解になる。
実数部を考慮すると、下記になる。
電場が与えられていない状態で発生する速度((9)式(13)式)と電場を与えた状態で発生する速度(24)式を比べてみます。x方向の運動には差が無いものの、y方向の運動では、ドリフト成分
このように、x,z方向の電場を与えた場合、-y方向のドリフトが発生します。

最後に
本問は、プラズマ工学の内容も含まれていますが、注釈を与えた上で電磁気学の院試で問われることがあります。
類題として経験しておくと、実際に出題されたとき、有利になります。是非知識として持っておきましょう。