磁石同士に働く力と位置エネルギーの計算問題

問題

磁気モーメントM1,M2の磁石が下記の図のように置かれている。下記の問いに答えよ。

(1)磁石M1による磁石M2の位置エネルギー
(2)磁石M2r方向にに作用する力
(3)磁石M2が受ける偶力モーメント

磁石に関するパラメータ

磁気双極子モーメントと磁位、磁場

電気双極子の場合と同じく、磁気モーメントMを持つ磁石がr離れた位置の磁位ϕmは下記で表されます。

(1)ϕm=Mr4πμor3=Mcosθ4πμor2

これをr,θで微分することで、位置rでの磁界Hr,Hθ

(2){Hr=ϕmr=Mcosθ2πμor3Hθ=1rϕmθ=Msinθ4πμor3

磁気モーメントと位置エネルギー

外部磁界Hの磁界の中に磁気モーメントMを置いた時の位置エネルギーUは下記になります。

(3)U=MH

磁気モーメントと外部磁界の内積の負の成分に等しいです。

磁気モーメントは、負の磁荷から正の磁荷へ伸びるベクトルのため、無限遠から近づけていくとき、外部磁場との引力が発生します。これを相殺することから、負になる。ということですね。

磁石に働く力と偶力モーメント

ポテンシャルエネルギーがUのとき、一つの磁石にかかる力F

(4)F=gradU=grad(MH)

これより、あるx方向にかかる力は

(5)Fx=Ux

になります。磁石同士が距離r離れて正対している本問では、磁石に働く斥力(引力)になります。(同じく、θ方向に微分すれば、

また、本問の系の場合、棒磁石にかかる偶力モーメントNは周方向θにかかります。(偶力モーメントにより、棒磁石が物理的に回転する様をイメージすると分かりやすいです。)

よって、位置エネルギーUθで微分することで

(6)Nθ=Uθ

で表されます。この事実は(3)で使用します。

解答例

(1)位置エネルギー

磁石M1からr離れたM2に生じる磁界H1r,H1θは、(2)式より

(7){H1r=M1cosθ12πμor3Hθ=M1sinθ14πμor3

これより、磁石2の位置エネルギーU2

(8)U2=M2H1=M2cosθ2H1rM2cos(θ2+π/2)H1θ=M1M24πr3(2cosθ1cosθ2sinθ1sinθ2)

(2)磁石2に働く力

(5)式により、r方向に働く力Fr

(9)Fr=U2r=3M1M24πr4(2cosθ1cosθ2sinθ1sinθ2)

(3)磁石2の偶力モーメント

(6)式により、θ方向に微分すれば良く

(10)Nθ2=U2θ2=M1M24πr3(2cosθ1sinθ2sinθ1cosθ2)

最後に

本問は、大阪公立大の院試で実際に出題されたことがあります。磁石に関する問題は殆どの大学の院試で殆ど出題されたことがありませんが、上記の大学を志望する場合は注意しましょう。

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