専門1-3の科目内容
量子力学・半導体デバイス、論理回路、情報理論の3題から構成されています。
論理回路及び半導体デバイスについては標準的な内容ですが、量子力学、情報理論については、深堀した内容が出題されます。
名大 電気電子情報通信 院試の全体
基礎科目+専門科目で構成されています。
本記事で紹介する科目は専門科目に属します。志望コース共通で、6題中3題選択することが必要です。そのうち、電気回路、電子回路、論理回路(専門5)から選択できるのは2題までです。残りは、電力工学、量子力学・半導体デバイス、情報理論から選択します。
試験時間は180分で、1題当たり60分の配分になります。大学入試同様、時間に余裕があります。
論理回路=半導体デバイス<情報理論<量子力学 の難易度順と考えます。(右に行くほど難しい)
順に、量子力学は、とにかく計算量が多いです。ブラケット演算子までは出てきませんが、トンネル効果、周期ポテンシャル上の電子のエネルギーなど、シュレディンガー方程式を解く問題がよく出てきます。最終的に、透過率の計算まで求められることが多く、計算を工夫しないと時間内に終わりません。
半導体デバイスは、標準的な内容です。pn接合、金属-半導体接合のバンド図を記載する問題がよく出てきます。教科書で解説されていますので、練習さえすれば満点を狙える内容と思います。本ブログでも、バンド図の記事を書いています。よろしければご覧ください。
論理回路は、bit演算が頻出です。全加算器を用いた加算、減算、オーバーフローの判定などが出てきます。教科書でも説明されることが多い内容ですので、十分選択の余地はあると思います。前半は、論理関数の簡単化や真理値表を書く問題が出題されますので、得点源にしましょう。
情報理論は、標準的な内容ですが、演習に困りやすいと思います。電磁気、電気回路のように問題集が少ないからです。自身の所属する大学の講義で演習問題が充実していれば選択しやすくなります。
そうは言っても、電力工学、量子力学・半導体デバイス、情報理論の中から最低1題選択しなければならず、この中では一番簡単なことから、選択することをオススメします。
頻出分野は、情報量の計算、マルコフ情報源、通信路容量の計算です。
対策に使える参考書、問題集
全体
最近3か年は以下の分野の出題がありました。
- 2023年:
- 周期型ポテンシャルのエネルギー。波動関数の近似解を用いた電子の有効密度の計算
- 素数を判定する関数の真理値表。ある入力系列に対するDフリップフロップの出力。全加算器を用いたオーバーフローの判定。
- 無記憶情報源、マルコフ情報源のエントロピー、相互情報量、平均符号長の計算。
- 2022年:
- バンド構造と有効質量、自由電子密度の計算。ショートキー接合の電界強度、空乏層幅の計算。
- NANDを用いた等価論理回路の設計。論理関数の真偽判定。ある入力系列に対する順序回路の出力。
- マルコフ情報源のn次エントロピーの計算。通信路容量の計算。
- 2021年:
- パルスポテンシャルにある粒子を入射したときの反射率、透過率の計算。
- 論理関数の簡単化。Dフリップフロップを用いた順序回路の設計。全加算器を用いた減算。
- 2元対称通信路を無限接続したときの通信路容量の計算。
どの大問も複数の分野から出題があり、ボリュームが大きいです。量子力学はポテンシャルの問題が頻出です。論理回路は、簡単化に関する問題が意外と出てきますので、必ず得点しましょう。
情報理論は、2元対称通信路に関する問題は、こちらの記事が非常に参考になると思います。是非チェックしてください。
量子力学
量子力学(I)(新装版) (基礎物理学選書) 小出 昭一郎 (著)
名大に限らず、多数の大学のシラバスで紹介されています。ポテンシャルに関する章だけでも読むことをオススメします。
半導体デバイス
半導体工学 小長井誠(著)
同じく名大のシラバスで紹介されています。電子の有効質量に関する問題が良く出題されており、その解説があります。半導体デバイスを得点源にしたいときは購入必須です。
論理回路
ディジタル回路 五島 正裕 (著)
同じく名大シラバスで紹介されています。論理回路の参考書は豊富なので、お持ちのものでも良いと思います。頻出であるbit演算の解説が詳しければ、どの本でも構いません。
東大対策記事で紹介している本についても是非見てみると良いです。
情報理論
情報理論の基礎と応用 中川 聖一 (著)
名大シラバスで使用されているようですが、難しめの内容になります。得点源にしたいとき、2冊目の参考書としての購入をオススメします。
情報理論のエッセンス(改訂2版) 平田廣則 (著)
筆者のオススメ本です。非常に分かりやすく、演習問題の解答も丁寧に書かれています。こちらの内容を理解できれば、6,7割程度の得点を確保できると思います。
対策に使える他大学の問題
どの分野も他大学でよく出題されています。
基本的に、東大の問題をメインに対策していくと良いと思います。難易度、分量ともに丁度良いです。(併願する観点でもオススメします。)
量子力学はいたずらに問題を解くより、教科書を大事にした方が良いかもしれません。
最後に
筆者が名大を受けるならば、専門科目は「電子回路」、「電気回路」、「情報理論」、「電力工学」を選択すると思います。(左に行くほど本命。電力工学はバックアップ)
論理回路もオススメできますが、電気系の選択科目が多いので、親和性の観点からこの選択になりました。
他科目も勉強すれば得点できる内容ですので、自身の専攻と合わせて科目検討すると良いです。