(1)下記の関数f(x)の積分結果を、複素積分の考え方を用いて求めよ。
\begin{aligned}\int _{-\infty }^{\infty } f(x)dx=\int _{-\infty }^{\infty }\dfrac{x^{2}}{\left( 2x^{2}+1\right)^{2} }dx\end{aligned}
ただし、下図1の積分路を用いよ。
(2)下記の式のラプラス逆変換を留数定理を用いることで求めよ。
\begin{aligned}F\left( s\right) =\dfrac{s+1}{s^{3}+s^{2}-6s}\end{aligned}

はじめに
本問は、ジョルダンの補助定理を用いた複素積分のやり方を覚えるのに最適な問題です。分子に三角関数、対数関数などが乗っておらず、積分対象の関数が比較的平易です。
今後の記事で、複雑にした関数の場合も説明していきます。準備運動としてご覧いただければと思います。
留数定理とは
正則関数が閉曲線$C$の内部で有限個の孤立特異点$a_{1},a_{2},\cdots,a_{n}$を持つとき、下記の関係が成り立つことを言います。
\begin{aligned}\int_{c}f(z)dz=2 \pi i \sum^{n}_{k=1}\mathrm{Res}(f,a_k)\end{aligned}
$\mathrm{Res}(f,a_k)$は、孤立特異点$a_k$における$f(z)$の留数です。
- 1位の極(単純極)の場合:
- m位の極(多重極)の場合:
本定理を用いれば、複素関数の積分は直接計算しなくとも孤立特異点の情報だけで求められるようになります。
本記事で覚えてほしいこと
- 留数定理を用いて、閉路全体を積分した結果を求める。
- 円弧積分路\(C_{2}\)について、R→∞の極限を考え、0に収束することを示す。
- 実軸上の積分値\(C_{1}\)=(1.で求めた積分結果)になり、題意を満たす。
教科書でも同様の説明がありますが、平易な言葉で書くと上記のようになります。
本問に限らず、円弧積分路の結果は0になることが多いです。同様の問題を見かけた際は2.の想定で動くと良いかもしれません。
また、(2)については下記の手順で解けます。
- 与えられた像関数の極を計算する
- 留数定理より、与えられた像関数にexp項を乗算した場合それぞれの留数を計算する
- 2.を全ての極に対して足し合わせた結果が、求める原関数
問われていることはラプラス逆変換ですが、作業としては留数を考える作業と類似しています。別の分野として見るのではなく、このような点があることも注意しましょう。(証明は応用数学の教科書を参照ください。院試では、証明せずに使っても時間の制約的に大幅減点は無いと思います。
解答例
(1)留数定理を用いた複素積分
留数定理を用いた閉路全体の積分結果

与えられた関数を展開すると
与えられた積分路の孤立特異点は、\(z=\dfrac{i}{\sqrt{2}}\)。多重極のため、(4式)の微分項を計算する。
これにより、\(z=\dfrac{i}{\sqrt{2}}\)の留数は
\(C_{2}\)の積分結果
\(z=Re^{i\theta}\)で、\(0≦\theta≦\pi\)の積分範囲となる。
\(dz=iRe^{i \theta} d \theta\)であるので、次式のようになる。
\begin{eqnarray}\int _{C_{2}}\dfrac{\left( Re^{i\theta}\right) ^{2}}{\left( 2\left( Re^{i\theta }\right) ^{2}+1\right) ^{2}}\cdot iRe^{i\theta }\cdot d\theta\end{eqnarray}
R→∞の極限を考えたとき、Rの次数は(分母)>(分子)のため0に収束する。
\begin{eqnarray}\int _{C_{2}}f\left( z\right) dc\rightarrow 0\end{eqnarray}
最終的な積分結果
コーシーの積分定理により、
\begin{eqnarray}\int _{C_{1}+C_{2}}f\left( z\right) =2\pi i\cdot \left( \dfrac{1}{8\sqrt{2}i}\right)=\dfrac{\pi}{4√2}\end{eqnarray}
(5)式より、\(C_{2}\)分の積分値は0に収束するので、ジョルダンの補助定理から
\begin{aligned}\int _{C_{1}}f\left( z\right) dz=\int ^{\infty }_{-\infty }\dfrac{z^{2}}{\left( 2z^{2}+1\right) }dz =\dfrac{\pi }{4\sqrt{2}}\end{aligned}
z→xとすると、題意を満たす積分結果になる。
(2)留数定理を用いた逆ラプラス変換
与えられた関数$F\left( s\right) =\dfrac{s+1}{s^{3}+s^{2}-6s}$の極は
\[ \begin{aligned}s^{3}+6s^{2}-6s=0 \\ s(s-2)(s+3)=0 \\ s=-2,0,3\end{aligned} \]
それぞれの留数を足し合わせることで、原関数を得る。
であることが分かった。
最後に
本問が、複素積分を利用し、積分結果を求める問題の基本となる考え方になります。
分母が2次以上のとき、留数を求めるときに微分が必要なことに注意しましょう。


