はじめに
制御工学は、複数の大学の院試で出題されます。東大をはじめ、京大、科学大の一部の専攻で出題されます。また、就職してからも概念としてよく出てくるため、学生のうちに勉強しておいた方が良い実学科目になります。
一方で、”制御”という文字の難しさから、学生時代苦手とする方も多く見てきました。本記事では、初学者向けにオススメする書籍を中心に紹介していきます。
制御工学とは
出力値を目標値に近づけるよう、システムを構築する学問になります。システムにはブロック線図がよく用いられます。各ブロックは、比例要素、微分要素、積分要素に大別されます。そのまま微分方程式を解くように見えますが、実際はラプラス変換をした上で、微分項、積分項を排除して解きます。
このため、応用数学の知識が必要です。また、周波数応答も考えるため、フーリエ変換の知識も必要です。理解するために必要な数学の知識が多く、これが制御工学の敷居を上げていると感じています。
しかし、蓋を開けてみると、フーリエ変換もラプラス変換も、被積分関数にexp項を乗算して∞の領域まで広義積分しているに過ぎません。実は、制御工学を読み進めるために必要な数学の計算は、大学受験までの知識で出来てしまいます。詳しい物理的意味は一旦置いておいて、学習を進めるだけならば大学1,2年でも可能なため、早くから学習される方は上記を前提に進めると良いです。
- 初学者向けのオススメ記事
具体的な参考書
前章の背景から、制御工学の各論をいきなり紹介する教科書では無く、必要な数学の知識まで含めて説明している参考書を紹介していきます。
ラプラス変換さえ慣れてしまえば、後はブロック線図の内容通りに方程式を立てて計算する方針で一貫していることは覚えておくと良いです。
自動制御理論 樋口 龍雄(著) (オススメ)
- 説明の分かりやすさ:☆☆☆☆
- 演習問題の選定内容、量:☆☆☆★
- 例題、演習問題の解答の量、丁寧さ:☆☆☆☆
他の記事でも紹介していますが、私個人としては本書が最もオススメです。実際、初学で初めて手に取った本ですが、そんな状態でも理解できるような文書構成でした。説明が抽象的過ぎず、例示がくどくなく、すっと頭に入ってきます。
前半の章では、ラプラス変換の説明もありますし、やろうと思えば本書で学習が完結します。
強いて気になることを言えば、4章あたりの演習問題の選定がやや最近の院試の傾向から外れています。多彩な物理制御系を考えて、その伝達関数を作る問題です。名工大で出題されることが多いですが、その他の大学ではあまり見ません。あくまでも、伝達関数の作成はブロック線図ベースで行えれば
また、電気回路の制御系を考える場合、二端子対回路の知識が必要です。大学2年生の後期あたりで勉強する分野ですので、先取り学習者からすると間に合っていない可能性もあります。
筆者としては、これは仕方ないと思います。二端子対回路の知識が無くとも勉強を進めることができますので、問題が出てきてしまった場合は一旦飛ばして、その先を進めていきましょう。
※問題のレベルとしては易しめですので、院試を見据える際は別の問題集が必要です。
演習で学ぶ基礎制御工学 森 泰親 (著)
- 説明の分かりやすさ:☆☆☆★
- 演習問題の選定内容、量:☆☆☆☆
- 例題、演習問題の解答の量、丁寧さ:☆☆☆☆
問題演習から勉強する方法も良いです。特に、本書は、いきなり問題を取り上げるのではなく、問題を解くのに必要な前提知識を簡潔に紹介し、そこから演習に入る構成になっています。
演習問題の量と解説も申し分なく、初学者でも理解できる手厚い内容になっています。簡潔な説明から、分かりやすさについては星を一つ落としていますが、時間が無い中での勉強ならば、こちらの方が良いかもしれません。
番外編:演習で学ぶ基礎制御工学 実践編 森 泰親 (著)
他、実践編の位置づけとなる問題集も最近発行されていました。企業での設計を行う場面を想定して本書を執筆されたかもしれませんが、ボード線図の作図など、院試で使う分野についても説明があります。制御を少し勉強してみたが、扱い方も勉強したい際は、本書を手に取ってみると良いかもしれません。
最後に
現代制御については、今や九大と京大の一部の専攻しか出題しないようになりました。初学者としては、まず古典制御を完璧にしてほしい思いから、本記事では紹介しません。


