例題を用いたグラムシュミットの直交化法の解説

問題

3次元実ベクトル空間の元 \(\boldsymbol{a}=\begin{pmatrix} 2 \\ 0 \\ 0 \end{pmatrix},\boldsymbol{b}=\begin{pmatrix} 0 \\ -1 \\ 0 \end{pmatrix},\boldsymbol{c}=\begin{pmatrix} 1 \\ 1 \\ 1 \end{pmatrix}\)を考える。
3つのベクトルは全て線形独立であり、\(\boldsymbol{a}と\boldsymbol{b}\)は互いに直交している。\(\boldsymbol{a}、\boldsymbol{b}\)を基底の一部とし、正規直交基底を作成せよ。

グラムシュミットの直交化とは

あるベクトル群を直交座標に変換する手法です。

これにより、複雑な関数を人間が理解しやすい形に変換することができます。

例えば、xy項が含まれている2次形式の関数を座標変換し、x,yそれぞれの式の楕円体で表すことができます。

本記事で覚えたいこと

正規直交化の手順
  1. 既に直交しているベクトルを単位ベクトル\(\boldsymbol u_{1},\boldsymbol u_{2}…\)に変換する
  2. グラムシュミットの直交化法により、新たに直交ベクトル\(\boldsymbol v_{3}\)を以下の式で求める
  3. \(\boldsymbol v_{3}=\boldsymbol c-( \boldsymbol u_{1}・\boldsymbol c)・\boldsymbol u_{1}-( \boldsymbol u_{2}・\boldsymbol c)・\boldsymbol u_{2} \cdots \)
  4. \(\boldsymbol{v_{3}}\)を単位ベクトルにする
補足

グラムシュミットの直交化法を平易な言語として置き換えると以上のようになりました。
式の意味は他サイト様の解説が充実しています。

一言で申し上げると、下図のようになります。正規直交基底に変換対象のベクトル\(\boldsymbol c\)を、自身の正射影と引くと、直交ベクトルになります。

解答例

まず、\(\boldsymbol a\),\(\boldsymbol b\)を単位ベクトル\(u_{1},u_{2}\)に変換する。

\(\boldsymbol u_{1}=\dfrac{1}{2}\begin{pmatrix} 2 \\ 0 \\ 0 \end{pmatrix}=\begin{pmatrix} 1 \\ 0 \\ 0 \end{pmatrix}\)

\(\boldsymbol u_{2}=\boldsymbol b = \begin{pmatrix} 0 \\ -1 \\ 0 \end{pmatrix}\)

この2つの単位ベクトルを用いて、\(\boldsymbol c\)を正規直交基底\(\boldsymbol v_{3}\)に変換する。

\begin{align}\boldsymbol v_{3}&=\begin{pmatrix} 2 \\ 2 \\ 2 \end{pmatrix}-\left( \begin{pmatrix} 1 \\ 0 \\ 0 \end{pmatrix}\cdot \begin{pmatrix} 2 \\ 2 \\ 2 \end{pmatrix}\right) \cdot \begin{pmatrix} 1 \\ 0 \\ 0 \end{pmatrix}-\left( \begin{pmatrix} 0 \\ -1 \\ 0 \end{pmatrix}\cdot \begin{pmatrix} 2 \\ 2 \\ 2 \end{pmatrix}\right) \cdot \begin{pmatrix} 0 \\ -1 \\ 0 \end{pmatrix} \\ &= \begin{pmatrix} 2 \\ 2 \\ 2 \end{pmatrix}-\begin{pmatrix} 1 \\ 0 \\ 0 \end{pmatrix}-\begin{pmatrix} 0 \\ 1 \\ 0 \end{pmatrix} \\ &= \begin{pmatrix} 0 \\ 0 \\ 2 \end{pmatrix}\end{align}

\(\boldsymbol v_{3}\)を単位ベクトル\(\boldsymbol u_{3}\)に変換すると、\(\boldsymbol u_{3}=\begin{pmatrix} 0 \\ 0 \\ 1 \end{pmatrix}\)

よって、求める正規直交基底\(\boldsymbol u_{1},\boldsymbol u_{2}, \boldsymbol u_{3}\)は、\(\boldsymbol u_{1}= \begin{pmatrix} 1 \\ 0 \\ 0 \end{pmatrix},\boldsymbol u_{2}= \begin{pmatrix} 0 \\ -1 \\ 0 \end{pmatrix},\boldsymbol u_{1}= \begin{pmatrix} 0 \\ 0 \\ 1 \end{pmatrix}\)

最後に

固有値を用いて求めた固有ベクトルが、最初から直交していると限りません。このような時、本問の考え方を使います。

単に対角化するだけでなく、直交行列を用いての対角化を求められた際は、是非使用してみてください。

発展形として、2次形式に関する問題を下記記事で取り扱っています。

参考文献

文献ではなく動画ですが、、非常に分かりやすいです。(8:30~直交化の意味を解説する時間です。)

タイトルとURLをコピーしました