フーリエ余弦変換を利用した積分計算

\(f(x)=e^{-a|x|}\)をフーリエ変換し、その結果を利用して下記の積分値を求めよ。
\begin{eqnarray}\int ^{\infty }_{-\infty }\dfrac{3}{9+x^{2}}dx\end{eqnarray}
ただし、以下の公式を利用して良い。
\begin{eqnarray}F\left( \omega \right) =\dfrac{1}{\sqrt{2\pi }}\int _{-\infty }^{\infty }f\left( x\right) e^{-j\omega x}dx \\
f\left( x\right) =\dfrac{1}{\sqrt{2\pi }}\int _{-\infty }^{\infty }f\left( \omega \right) e^{j\omega x}d\omega \end{eqnarray}

はじめに

exp項のフーリエ変換は、素直に計算すると手間がかかります。留数定理が必要だからです。

そこで、本記事では、フーリエ余弦変換に注目します。exp項ではなく、cos項に注目してフーリエ変換を行えば、計算が非常に楽になります。

本記事で覚えたいこと

  1. 偶関数のフーリエ変換は\(\cos\)項にのみ対して行えば良い。
  2. オイラーの公式\(\cos( \omega x)=\dfrac{e^{i \omega x}+e^{-i \omega x}}{2}\)を利用し、exp項のフーリエ変換を行う

1.が重要です。

与えられた関数\(f(x)=e^{-a|x|}\)は、\(f(-x)=e^{-a|x|}=f(x)\)であるため、偶関数です。

\(\sin\)項は奇関数のため、f(-x)=-f(x)です。負の領域と正の領域を積分する場合、相殺し合うので初めから無視して良いです。

よって、\begin{align}F[f(x)]=\dfrac{1}{\sqrt {2\pi}}\int ^{\infty }_{-\infty }e^{-a\left| x\right| }e^{-i\omega x}dx\\ =\dfrac{2}{\sqrt {2\pi}}\int _{0}^{\infty }e^{-ax}\cos \omega xdx\end{align}

と変形できます。式(4)は減衰積分のため、このままでも高校数学で行ったように部分積分を2回行えば右辺にも左辺と同じ積分項が出てきます。ただ、計算に手間がかかってしまいます。

一方で式(5)は、この結果に対しオイラーの公式を用いて\(\cos\)項をexp項に分解し、積分する一本道の方針で良いです。

フーリエ変換は、偶関数の性質をよく使います。本問を通して是非覚えましょう。

解答例

フーリエ変換

前章のように、\(f(x)\)をフーリエ変換する。

\begin{align}(5)&=\dfrac{2}{\sqrt {2\pi}}\int _{0}^{\infty }e^{-ax}\cos \omega xdx \\ &= \dfrac{1}{\sqrt{2\pi }}\int ^{\infty }_{-\infty }\left( e^{-\left( a-i\omega \right) x}+e^{-\left( a+i\omega \right) x}\right) dx \\ &=\dfrac{1}{\sqrt{2\pi }}\left[ \dfrac{e^{-\left( a-i\omega \right) x}}{-\left( a-i\omega \right) }-\dfrac{e^{-\left( a+i\omega \right) x}}{a+i\omega }\right] ^{\infty }_{0} \\ &= \dfrac{1}{\sqrt{2\pi }} \left(\dfrac{1}{a-i\omega }+\dfrac{1}{a+i\omega }\right) \\ &= \dfrac{1}{\sqrt{2\pi }}\dfrac{2a}{a^{2}+\omega ^{2}}\end{align}

フーリエ逆変換を利用した積分

ここまで来れば、前回の記事と同じように、求めたい積分式と同じ形になるように値を代入していくのみです。

(9)式を逆フーリエ変換する。

\begin{align}e^{-a\left| x\right| }=\dfrac{1}{2\pi }\int ^{\infty }_{-\infty }\dfrac{2a}{a^{2}+\omega ^{2}}e^{i\omega x}d\omega \end{align}

分母が9、積分関数にexp項が無いことから、\(a=3,x=0\)を代入。

\begin{eqnarray}1=\dfrac{1}{\pi }\int _{-\infty }^{\infty }\dfrac{3}{9+\omega ^{2}}d\omega\end{eqnarray}

よって、求める積分値は

\begin{eqnarray}\int ^{\infty }_{-\infty }\dfrac{3}{9+x^{2}}dx=\pi\end{eqnarray}

最後に

フーリエ変換の式が与えられたときは、与えられた関数が奇関数、偶関数の性質を持つか調べましょう。うまく行けば、本記事のように計算が楽になります。

後半の積分値の算出については、\(x\)だけでなく、\(a\)も代入する必要があります。このように、複数のパラメータをいじる必要もあることを覚えておくと良いかもしれません。

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