静電界の回転は0(無渦)であることの説明と例題

問題

(1)下記のベクトル界の中で、静電界を表すものを答えよ。

(1){E1=(3y,3x+y+5z,5y)E2=(x2y2,4,2xy)E3=(x+y,x+y,2z)

(2)(1)で与えたベクトル界の中で、ラプラス方程式を満たすものを答えよ。

静電界とは

  1. 時間変動しない電場E(t)=0
  2. エネルギーが保存する場
  3. 渦が発生しない。rotE=0

1.ばかり言われていますが、電磁気学を根本から理解する上で、2.3も必要な性質です。

静電界の場合、ある地点rにおける電場は時間項t抜きでE(r)で表されることから、電位Vは

(2)V=rE(r)dr=const

となる。よって、任意の時間で電位は変わらないことから、エネルギーは保存すると言えます。

しかし、時間項が付属する際は、(1)式に変数が付いてしまい、時間によって変化することが分かります。よって、静電界の場合のみ、エネルギーは保存します。

また、静電界の場合、回転成分も発生しません。

もし回転成分が非零ならば、マクスウェル方程式

(3)rotE=Bt0

も非零になるから、時間変動する磁場が発生します。磁場の発生源は電流ですから、時間変動する電流(電場)も存在すると解釈できます。背理法により、静電場であるためには回転成分が0である必要が分かりました。

静電界と電位

(1)式のように、ベクトル場の線積分で電位Vを求めることができますが、他の方法でも電位を考えることができます。

前章より、静電界であるとき、rotE=0であることが分かりました。あるポテンシャルの勾配(grad)に回転(rot)を取った場合、一般的にrot(gradA)=0であることから、定数のポテンシャルVを設定すると

(4)E=gradV

と表記できます。電位の定義で示すこともできますが、ベクトル関数を解くことでも電位を導くことができました。

ラプラス方程式とは

ポアソン方程式の右辺が0のとき、ラプラス方程式と言います。

(5)ΔV=ρεo

(6)ΔV=0

ラプラス方程式を満たす条件

電場の発散divが0であることです。

これは、マクスウェル方程式

(7)divE=ρεo=0

になることから、ポアソン方程式(5)式に代入すると、ラプラス方程式(6)式になることが分かります。

また、発散が0である物理的意味は、ある閉曲面から染み出す場が0だと言うことです。これは、電場が0であることを意味し、発生源の電荷ρも0になることが分かります。

解答例

(1)ベクトル関数の計算

E1=(3y,3x+y+5z,5y)について、回転rotを取って

(8)rotE1=(y5yz(3x+y+5z),x5yz5y,x(3x+y+5z)y3y)=(55,0,33)=(0,0,0)

よって、E1は静電場である。

E2=(x2y2,4,2xy)について

(9)rotE1=(y2xyz4,x2xy+z(x2y2),x(x2y2)y4)=(2x,2y,2x)

回転は非零であるため、E2は静電場ではない。

E3=(x+y,x+y,2z)について

(10)rotE3=(y(2z)z(x+y),x(2z)+z(x+y),x(x+y)y(x+y))=(0,0,2)

E3は静電場ではない。

(2)ラプラス方程式で表される関数

前節より、発散が0のベクトル関数が条件を満たします。

E1=(3y,3x+y+5z,5y)について、

(11)divE1=0+1+0=1

E2=(x2y2,4,2xy)について

(12)divE2=2x+0+0=2x

E3=(x+y,x+y,2z)について

(13)divE3=1+12=0

よって、E3がラプラス方程式を満たす。

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