時多重分割伝送方式(TDM)とは
ある信号をパルス波にして送信するとき、空き時間に別の信号を送信する方式です。(TDM:Time-division multiplexingの略です。)
本伝送方式を用いることで、複数の信号を同じ通信路で送信することができます。
以前の記事で、PCM伝送について説明しました。
信号”6″(2進数では110)を送信したいとき、パルス波を110の順で送信すれば良いです。
ただ、この送信が比較的すぐに終了し、次回の送信周期まで時間が余った時はどうなるでしょうか。特に何も意味のない時間になってしまいます。
そこで、下記のように空き時間に別の信号を送信することを考えます。
余った時間に別の信号をパルス波として送信する。(別チャネルに切替)
それでも時間が余った時は、別のパルス波を送信。。。
以上を余った時間が無くなるまで続ける。
同じ時間軸で別の信号を代わる代わる送信することから、時多重分割伝送方式と言います。
ある信号の送信をパルス波で送信し終え、別の信号の送信を開始するときは制御bitを打つことで、受信側に切替を通知します。
また、送信したい信号を一通り送信完了し、次回のナイキスト間隔で1つ目の信号の値を更新するとき、フレーム同期ビットを通知することで、受信側に更新を通知します。
時多重分割伝送方式のビットレート
1信号分のビットレート*チャネル数
以前の記事で詳しく紹介しています。
量子化レベルを表すことができるbit数を算出し、ナイキスト周波数を乗算することで1信号分のビットレートを求められます。
今回、複数の信号を送信していることから、信号の数(チャネル数)を上記結果に乗算することで、求めることができます。
制御ビットのビットレート
前節の通り、制御ビットは、信号が切り替わるタイミングごとに1ビット立ちます。
よって、信号を送信するナイキスト間隔1回につき、チャネル数分ビットが立ちます。
チャネル数にナイキスト周波数を乗算すれば、ビットレートを求めることができます。
フレーム同期ビットのビットレート
ナイキスト間隔1回につき、1回だけビットが立ちます。
よって、ナイキスト周波数分、1秒にフレーム同期ビットが立ちます。
これが、求めるビットレートです。
周波数多重分割伝送方式(FDM) ※参考
前章では、時間領域で別の信号を切り替えて送信していました。
他、周波数領域でも別の信号を送信する方式があります。
周波数多重分割伝送方式と言います。(FDM:Frequency-division multiplexingの略です。)
周波数が異なる搬送波を使用し、それぞれに別の信号を割り当てます。この結果、周波数帯域ごとに異なる信号が割り当てられ、スペクトルが干渉しないです。
受信側では、必要な周波数帯域の信号をフィルタで通し復調します。(下記概要図)
解答例
1信号分のビットレート*チャネル数
512ビットレベルの量子化なので、\(\log_{2}512=9bit\)の符号になる。
1チャネル分伝送したときのビットレートは、ナイキスト周波数が4kHzのため
\begin{aligned}4*9=36[kbit/sec]\end{aligned}
これを24チャネル伝送することを考える。上式の結果を24倍すれば良いので
\begin{aligned}36*24=864[kbit/sec]\end{aligned}
制御ビットのビットレート
前節の説明から、チャネル数24にナイキスト周波数を乗算すれば良いので
\begin{aligned}24*4=96[kbit/sec]\end{aligned}
フレーム同期ビットのビットレート
ナイキスト周波数と同じなので、\(4[kbit/sec]\)
結果
(1)~(3)式を合計すれば良いので
\begin{aligned}864+96+4=964[kbit/sec]\end{aligned}
参考文献
通信システム工学:安達文幸(著) P142-144