院試でよく使う半導体デバイスの基本事項のまとめ

はじめに

本記事は、院試に向けた半導体デバイスの基本事項のまとめ記事になります。電子回路に続いての作成になります。

半導体デバイスでは、エネルギーバンド図、PN接合、ショットキー接合、MOSFETの4単元が頻出になります。これらに関するまとめを先に行い、他に知っておいた方が良い内容も最後に紹介します。

エネルギーバンド図

高エネルギーほど上に記載する図になります。電子、正孔のエネルギー準位状態を考える上でよく使うと同時に、院試でも作図する問題は良く出てきます。

一般的に、$E_c$は伝導帯の最下点、$E_v$は価電子帯の最上点になります。間をバンドギャップ$E_g$と言い、電子が準位を取れない点となります。
バンドギャップ以上のエネルギーを与えた時、電子は伝導帯に励起でき、電流が流れます。

バンドギャップは、電子を流し得る物質ほど狭く、絶縁体ほど広い特性を持ちます。半導体は、中間の性質を持つため、エネルギーの印加状態を変えることで電流のON、OFFを適切に変えることができます。

有効状態密度の関係式

伝導帯の有効状態密度を\(N_{c}\)、価電子帯の有効状態密度を\(N_{v}\)とすると、ある温度で伝導帯に励起される電子の密度\(n\)と正孔の密度\(p\)は、以下のようになります。

\begin{cases}n=N_{c}\exp \left( -\dfrac{E_{c}-E_{f}}{kT}\right) \\ p=N_{v}\exp \left( -\dfrac{E_{f}-E_{v}}{kT}\right) \end{cases}

フェルミエネルギーは次式で示されます。

\begin{eqnarray}\exp \left( \dfrac{2E_{f}-E_{c}-E_{n}}{kT}\right) =\dfrac{N_{v}}{N_{c}} \\ E_{f}=\dfrac{E_{c}+E_{v}}{2}+\dfrac{kT}{2}\log \left( \dfrac{N_{v}}{N_{c}}\right)\end{eqnarray}

詳しい導出は、下記の記事で示しています。一から導出する場合、ガウス積分が必要で計算が複雑になるため、一度は練習しておくことをオススメします。

不純物半導体の各種特性

先の章では、簡単のために真性半導体の前提で説明しました。

しかし、不純物半導体の場合を出際されることもあります。特に、大問の前半は真性半導体の振る舞いを問い、後半になって問われることが多いです。この場合、バンドギャップの途中の位置にドナーアクセプタの準位が発生し、少しのエネルギーで励起しやすくなります。

n型半導体の場合、下記の電子密度で表されます。

\begin{aligned}n=&\dfrac{1}{2}\left( N_{D}+\sqrt{N_{D}^{2}+4n_{i}^{2}}\right) \\ &=\dfrac{1}{2}( N_{D}+\sqrt{N_{D}^{2}+4N_{c}N_{v}\exp \left( -\dfrac{E_{g}}{kT}\right) }\end{aligned}

ここから、温度状態によって近似式を与え、各温度状態に適した電子密度を算出するところまでがセットで問われます。高温になるほど、励起する電子が増えて電子密度が高くなることは想像に難くないですが、具体的な式については下記の記事で紹介しています。

PN接合

p型半導体、n型半導体を接合させたデバイスになります。接合面付近では電子、正孔が打ち消し合い空乏層が発生します。

分極の観点から、p型側では+、n型側では-に帯電します。よって、p型からn型へ電場が生じ、下記のような電荷、電場、電位分布となります。

電気的中性条件、ポアソン方程式および境界条件を適用することにより、電場、電位は下記の式で表されます。

\(-x_{p}≦x≦0\)のとき

\begin{eqnarray}E_{1}\left( x\right) =-\frac{qN_{p}}{\varepsilon }x+C_{1}\end{eqnarray}

\begin{eqnarray}V_{1}(x)=-\int ^{x}_{0}-\frac{gN_{p}}{\varepsilon }( x+x_{2}) dx\\ =\frac{qN_{2}}{\varepsilon }( \frac{1}{2}x^{2}+x_{2}x) +C_{3} \end{eqnarray}

\(0≦x≦x_{n}\)の範囲において

\begin{eqnarray}E_{2}\left( x\right) =\frac{qN_{d}}{\varepsilon }\left( x-x_{n}\right)\end{eqnarray}

\begin{eqnarray} V_{2}( x_{n}) &=\frac{qN_{d}}{2\varepsilon }x_{n}^{2}\end{eqnarray}

ショットキー接合

金属と不純物半導体を接合したデバイスとなります。n型との接合を良く問われ、ショットキーダイオードと呼ばれることも多いです。

金属とn型半導体を接合すると、半導体側から金属へ電子が流入し、空乏層が発生します。これにより空乏層が発生、その分の電場によるエネルギー障壁が発生し、半導体から金属へこれ以上電子が流れることを妨げます。

これに対し、金属側へ正の電圧をかけると準位が低くなり、導通状態が変わります。(スイッチングON)

電圧により導通状態を切り替えられることが特徴になります。

上記は、半導体側の準位が金属よりも高かった場合の話でしたが、逆の場合もあります。この場合はオーミック接合と言い、金属側の電子が半導体側に流れる場合もあります。試験ではショットキー接合が問われることが多いですが、こちらもバンド図が書けるようにはなった方が良いかもしれません。

※どの大学院でも、バンド図の作図は確実に出てきますが、その先については多種多様な問われ方をしています。本ブログでも機会があれば紹介したいと思いますが、ここでは省略します。誘導自体は丁寧に設定していることが多いため、読み進めていくつもりで解いていきましょう。

MOSFET

電界効果トランジスタと呼び、こちらも電圧によって導通状態を変えられるデバイスとなっています。

ゲート、ソース、ドレインから構成されており、ゲートに印可する電圧を変化させることで、ソース-ドレイン間の導通状態を切り替えることができます。

特に、ゲート電圧$V_gs$が閾値電圧$V_th$を超えた際に反転層が発生することは必ず押さえておきたいです。

ドレイン電流値$I_{DS}$の導出

ソースからドレインへ電子が流れるということは、ドレインからソースへ電流が流れているのと同義になります。

ゲート電圧$V_{gs}$とドレイン電圧$V_{DS}$、閾値電圧$V_{th}$の大小によって下記の関係になります。

(i)\(V_{gs}≧V_{th} \) かつ \(V_{DS}≦V_{gs}-V_{th}\) のとき

\begin{align}I_{DS} &= \dfrac{\mu W C_{ox}}{L} \left( (V_{gs} – V_{th})V_{DS} – \dfrac{V_{DS}^{2}}{2} \right) \end{align}

(ii)\(V_{gs}≧V_{th} \) かつ \(V_{DS}≧V_{gs}-V_{th}\) のとき

\begin{align}I_{DS}=\dfrac{\mu C_{ox} W}{2L}\left( V_{gs}-V_{th}\right) ^{2}\end{align}

(iii)\(V_{gs}≦V_{th}\) のときは反転層が形成されないため、ドレイン電流は流れません。

詳しい導出は下記の記事で示しています。

バイポーラトランジスタ

大学によっては問われることがあります。電子回路のまとめ記事で少し触れましたが、ベースに電圧を加えることで準位が下がり、エミッタからコレクタへ電子が導通するようになります。

増幅率向上の施策として、よく下記が出てきます。

  • ベースの幅を狭くする
  • エミッタの不純物濃度を上げる

それぞれ、エミッタからコレクタへ電子が流れやすくなる。または流れる電子の量が増えることを示しており、増幅率向上につながります。

電子回路としての計算は、電子回路側のまとめ記事で詳しく解説しています。気になる方はそちらもご覧ください。

最後に

26/6月現在、投資家界隈で何かと熱い半導体ですが、基本理論は本記事で紹介した通りです。筆者の周りにも半導体の関連会社で勤務されている技術者は複数人いますが、その方々が口を揃えて言っていることは、「給料が高い」です。

多少の激務は許容して、金持ちになりたいんだ!と言う方々にはオススメできる業種だと思います。是非、大学の勉強が本業種を志す動機の一つになると幸いです。

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