【原子力発電】発電原理と核分裂反応を継続する4因子の公式

原子力発電に関する以下の問いに答えなさい。

(a)核分裂反応と核融合反応を対比して説明しなさい。
(b)ウラン235を燃料とする原子炉内での、核分裂反応を持続させる連鎖反応を簡潔に説明しなさい。

神戸大学大学院 電気電子工学専攻 電力工学2020 より引用

原子力発電とは

原子に中性子を衝突させたときの核分裂反応により発生するエネルギーを利用して蒸気を生成。その蒸気でタービンを回し、発電するシステムを言います。

原子力発電には、BWRPWRの2システムあります。

BWR 沸騰水型原子炉

Boiling Water Reactorの略です。

原子炉の中で水を沸騰し、その蒸気でタービンを回す方式です。タービンを回した蒸気は水に戻り、給水ポンプを経て原子炉に戻ります。システムとして単純で、分かりやすいです。

PWR 加圧型原子炉

Pressurized Water Reactorの略です。

BWRでは、原子炉の中で沸騰した水をそのままタービンに渡していましたが、PWRの場合、系が分かれています。

PWRでは、水を加温するときに圧力をかけて、蒸気にはしないです。

加温した水を蒸気発生器に渡し、系の違う水を蒸気にします。

この蒸気でタービンを回し、エネルギーを得ます。

BWRは、放射能を帯びた水でそのまま発電しますが、PWRの場合、タービンを回す水は放射能を帯びていません。

この意味で、安全であると言えます。

核分裂反応とは

冒頭で述べたように、原子が核分裂することを言います。

原子は、質量数(原子番号)ごとに結合エネルギーを持っています。

質量数60(コバルト)で結合エネルギーは最大となり、それ以上の質量数では漸減していきます。

核分裂反応は、質量数60より大きい原子に対して発生します。

ウラン235の場合、原子番号235です。中性子を受けると、吸収することなく核分裂します。

このとき、質量欠損\(\Delta m\)が発生します。

アインシュタインの相対性理論より、質量欠損により発生するエネルギーは\begin{aligned}E=\Delta c^{2}\end{aligned}です。\(c\)は光速\(3.0*10^{8}\)ですから、僅かな質量欠損でも膨大なエネルギーが発生することが分かります。

なお、ウラン235は、自然界に0.7%しか存在しない物質です。そのため、発電の際は低濃縮ウラン(2~3%)を使用します。(残りの97~98%はウラン238)

核融合反応とは

核分裂とは逆に、原子が中性子を吸収し、新たな原子を生成する反応を言います。

原子番号が60より小さいとき、質量数の増加に応じて結合エネルギーも増大します。

よって、入射してきた中性子を吸収する余裕があります。

このように、核融合反応は、質量数60より小さい原子に対して発生します。

核分裂と同じく質量欠損も発生しますので、最終生成物は異なれどエネルギーは発生します。

核分裂反応を継続するための方策

大枠の考え方として、中性子がウラン235に命中し続けること。これに尽きます。

ただ、具体的にどういった手法を用いて命中精度を上げるのでしょうか。

本章では、いくつか代表的な方策を説明します。

減速材を使用し、中性子の速度を遅くする(熱中性子)

中性子は速度によって、高速中性子、熱中性子に大別されます。名前の通り、高速中性子の方が速度が大きいです。

ところが、核分裂反応に使用する中性子は、熱中性子です。

これは、衝突断面積の考え方が影響しています。

高速の場合、衝突対象の物体が小さく見え、当たりにくくなります。

一方で、熱中性子の場合はそれほど高速ではないので、燃料(ウラン235)に命中しやすくなります。

ウラン235の核分裂に必要なエネルギーは、熱中性子の速度でも十分満たすことができるので、発電において好都合と言うわけですね。

では、どのようにして熱中性子を多くすれば良いのでしょうか。答えは減速材の使用です。

減速材には複数の候補がありますが、一般的に軽水がよく使われます。理由は安価だからです。

高速中性子は、軽水の中の分子と衝突することを繰り返し、運動エネルギーの損失により減速します。

いずれは熱中性子となり、衝突しやすくなる。と言うわけですね。

他、制御棒の使用により原子炉内の中性子の個数を調整することがあります。

あまり、熱中性子を増やしても、爆発的に反応を繰り返し制御不能になってしまうからです。

四因子の公式

原子炉内の反応の程度\(k\)を定量化した式で、下記で表されます。

\begin{aligned}k=\eta \varepsilon p f\end{aligned}

各変数の意味
  1. \(\eta\):燃料が中性子1個の衝突を受けた時に放出する中性子の平均個数
  2. \(\varepsilon\):高速中性子がウラン238と衝突して核分裂を発生する係数
  3. \(p\):高速中性子がウラン238の共鳴吸収を逃れる確率
  4. \(f\):熱中性子の利用率

2.について、高速中性子は衝突断面積が小さいものの、実際に燃料に命中したときは核分裂が発生する場合があります。このことを考慮した係数です。

3.について、減速材が関係します。高速中性子→熱中性子になる間にウラン238に吸収されない確率を言います。

4.について、制御棒の操作で利用率を調整することができます。

解答例

前章までで大方説明してしまったので、参照するページを示して終わりにします。

(a)核分裂反応と核融合反応

核分裂反応とは核融合反応とはの節をご覧ください。

(b)連鎖反応の持続

減速材を利用し、高速中性子を熱中性子に変える。などです。

詳しくは、核分裂反応を継続するための方策をご覧ください。

参考文献

発電工学:吉川 榮和(著)、第5章

タイトルとURLをコピーしました