高校と大学の電磁気学の違いと勉強方針、初学者向けのオススメ参考書

はじめに

本サイトは、ある程度の専門知識がある電気系学生、技術者の方々に対し記事を執筆しています。2026年現在、ある程度の記事を出すことができましたが、初学者向けの方々へのフォローが足りていないように感じます。

そこで、本記事では、大学に入ったばかりの学生または大学の電磁気学を初めて勉強する方々向けにオススメする参考書を紹介していきます。

大学における電磁気学

高校と比較して、時間変動、場の勾配の概念が顕著になった。ことに尽きると思います。

高校物理では、電場、磁場が一定で与えられていることが多く、その条件下で問題を解いていました。学習指導要領にて、積分記号$ \int $を原則使わない都合が大きいです。この制約を加味して問題設定する場合、パラメータを一定値に取る必要がありました。もちろん、難しい大学を中心に微積を使う場面は0では無かったですが、丁寧な誘導の元に使用するように作問されていました。

大学ではこのような制約はありません。よって、ベクトル場を微分積分する概念の理解をするところから、電磁気学の勉強は始まります。最近の電磁気学の書籍では、ベクトル解析の説明をしてくれることが多いので、そういったものを選ぶことをオススメします。

ベクトル解析専用の書籍を買っても良いかもしれませんが、個人的にはそこまでしなくても。。と思っています。偏微分ができることが前提ですが、基本は下記のことを覚えていればOKです。

ベクトル解析の知識
  • 微分:下記の演算により、ベクトル場の下記成分を求められる。
    • 勾配(grad):スカラー関数に対し、x,y,zで偏微分した結果を座標(x,y,z)それぞれに格納する
    • 発散(div):ベクトル関数に対し、x,y,zで偏微分した結果を足す
    • 回転(rot):∇とベクトル関数の外積を取る
  • 積分:高校まで:スカラー(量)をそのまま足していけば良かった。
       大学から:ベクトル場を積分する場合、向きも含めて考える必要がある。

微分に関しては、こちらの記事で具体的な計算をしています。記事のテーマとしては難しいですが、解答例で行なっている計算は実にシンプルです。最初の部分は飛ばして構いませんので、計算練習に確認してみてはいかがでしょうか。

ベクトル場の積分の難しさに関しては、ガウスの法則を勉強するときに実感すると思います。地点Aから地点Bへのベクトル場を全て積分するとき、ある微小区間では一定値のベクトルが正の向きにかかっていた(+Eとする)のが、次の微小区間では同じ絶対値のベクトルが負の向きにかかっているとしましょう。(-Eとする) この場合、二つの微小区間で積分結果は0になります。

高校までの積分の場合、向きの概念が無かったため、積分結果は+2Aとなりますが、大学からは異なります。こういった背景知識に慣れることが重要です。

初学に役立つ教科書

前置きが長くなりましたが、紹介していきます。選定にあたっては、下記3つの観点を重視しました。

参考書選定の観点
  • 説明の分かりやすさ
  • 演習問題の選定内容、量
  • 例題、演習問題の解答の量、丁寧さ

説明の分かりやすさについて:初学者に寄り添った内容になっているかを最も重視しています。発展的な内容に関しては、あっても良いかもしれませんがプラス材料には含めません。

演習問題の選定内容、量についても重視しています。最終的には、定期試験で単位を取ること。院試で合格点を取ること。がゴールになります。頻出問題を過不足なく取り扱っているかを確認項目とします。取りこぼしがあること、または試験にあまり出ない問題を取り扱っている際は、評価が低くなります。

加えて、解答の説明内容についても別で評価項目にします。洋書にありがちですが、説明や問題の量に関してはすごくあるものの、肝心の解答についてはない場合があるからです。初学者でも分かるような内容、分量になっているほど、評価が高くなります。

また、大学向けの対策記事でも書籍を紹介していますが、それぞれの記事で対象としている大学の対策を第一とした選定になっています。本記事では、所属大学、院試での志望大学問わず、電磁気学を勉強する方々に対して一般的にオススメする参考書リストの位置付けで記載します。

具体的な参考書

本当に初学者向けの参考書と、1冊で院試までカバーできる参考書の2レベル帯で紹介します。後者は、院に入ってからの研究活動も含め一生手に取っておけます。

本当に初学者向けの参考書

題名の通りです。高校で学ぶ物理の前提知識に自信が無い方でも読破可能な内容と考えています。演習問題は、収録されている問題の内容は良い(試験でよく出てくる問題が多い)ものの、絶対数が少ないことが気になります。内容を一通り理解した後は、後段で出てくる院試までカバーできる参考書も読むか、演習書をやり込む方が良いかもしれません。

電磁気学入門 (物理学レクチャーコース) 

参考書選定の観点
  • 説明の分かりやすさ:☆☆☆☆
  • 例題、演習問題の選定内容:☆☆☆★
  • 例題、演習問題の解答の量、丁寧さ:☆☆☆★

amazonで高評価です。電磁気学の理解に必要な数学(ベクトル解析)に関する説明も序盤に多くあります。前提知識を知らなくとも問題なく読み進められます。会話調で分かりやすいのですが、誘電体と磁性体に関する説明があまりないことが気になります。工学部電気情報系で電磁気学を勉強する場合、非常に重要な分野です。境界条件含め、院試でも多数の出題があるため、この分野に関しては別の参考書を購入しての勉強が必要になります。

また、コンデンサに関する問題及びコイルのインダクタンスを算出する演習問題がもう少し増えれば良いなと考えています。確かに、平板コンデンサや円形コンデンサなどコンデンサの様々な形状を説明している章はありますが、コンデンサの一部の極板に電荷を与えた時、接地したときの振る舞いに関する問題が少ないことが気になっています。これも、工学部電気系の院試に頻出ですので、筆者としては重要視しています。

インダクタンス算出に関しても同様です。アンペールの法則、ビオサバールの法則で同軸ケーブル、円形コイルで発生する磁場分布を求める問題は確かに収録されているものの、その後のインダクタンスを求める問題が少ないように感じます。

理学部の方も含めた、”教養としての電磁気学”としては大変良いのですが、工学部向けの本サイトの趣旨からすると、コメントせざるを得ないです。ただし、収録されている演習問題はどれも良問ばかりで、Youtube、pdfで補足資料まで閲覧することができます。是非、お手元に取ってみてはいかがでしょうか。

基礎電磁気学: 電磁気学マップに沿って学ぶ  細川 敬祐 (著)

参考書選定の観点
  • 説明の分かりやすさ:☆☆☆☆
  • 演習問題の選定内容、量:☆☆★★
  • 例題、演習問題の解答の量、丁寧さ:☆☆☆★

電磁気学入門 (物理学レクチャーコース) と合わせ、本当の意味での入門書です。電場と磁場の関係性をマクスウェル方程式をはじめとする関係式から視覚的に分かるようになります。また、大変カラフルなので記憶に残りやすいです。欠点としては、演習問題が少ないことが気になります。電磁気学入門より少ないです。また、誘電体、磁性体に関する説明があまり無いです。(マクスウェル方程式を読み解くことをコンセプトにしているので仕方ない部分は有りますが)

演習問題の解答について、略解しか無いため初めは☆☆★★のつもりでしたが、ネット上に補足資料があることが分かりました。このことから、☆☆☆★にしています。

1冊で院試までカバーできる初学者向け参考書

前章から分量難易度共に上がりますが、一生モノとなる参考書を追加で2冊紹介します。

前章では、誘電体、磁性体に関する説明の少なさを問題視していましたが、下記に紹介する2冊についてはしっかり説明されています。

よく分かる電磁気学 前野 昌弘 (著) レベル:初学者〜中堅

参考書選定の観点
  • 説明のレベル、分かりやすさ:☆☆☆★
  • 演習問題の選定内容、量:☆☆☆★
  • 例題、演習問題の解答の量、丁寧さ:☆☆☆★

筆者が最もオススメする初学者向け参考書です。なぜそうなるのか?の理由について、細かいところまで語っています。管理人に限らずですが、間違いを過度に恐れるあまり当たり障りのないことを書いてしまいがちです。それが、本書籍については作者の経験に基づいた言葉で、周りの人が分かるようにご説明されています。

欠点としては、ベクトル解析に関する説明があまり無いことです。(章末の付録に公式とその解釈を掲載している程度)
正直、ベクトル場の微分積分の概念を感覚的に理解できているならば気にはなりませんが、初学者向けの記事ですので注意点として述べます。

演習問題に対しては、一部難しい内容が含まれていますが、必要なものは揃っています。前半の問題を中心に進めると良いです。演習問題の解答も、前節で紹介した書籍の補足資料に比べると少ないですが、途中式を追えるレベルでは揃っています。同じく、著者に質問できる窓口もあるため、初学の場合でも特に困らないのでは。と考えます。(いい時代になったなぁ)

電磁気学 宇野 亨 (著), 白井 宏 (著)

参考書選定の観点
  • 説明の分かりやすさ:☆☆★★
  • 演習問題の選定内容、量:☆☆☆☆
  • 例題、演習問題の解答の量、丁寧さ:☆☆☆★

学歴ロンダを目指す大学生にオススメする参考書記事でも紹介しました。問題選定が非常に良いです。定期試験、院試で問われがちな問題がよくまとまっており、解説も詳しいです。ベクトル解析に関する説明も2章でしっかりされており、問題演習に重きを置きたい方にオススメです。

教科書のサイズが大判(A4相当)でページ数も多いため、持ち運びにはご注意ください。また、読破にも時間がかかると思います。他の書籍のように、ネット上での著者のフォロー体制は存在しないです。(無い方が普通で、今までの書籍が贅沢過ぎるだけかもしれないが・・)

他書籍との相対評価で分かりやすさが低めになってしまいましたが、10数年前の教科書事情を踏まえると、全然分かりやすい領域にあります。学部1,2年ならば、院試までまだまだ時間があります。だからこそ、こういった本でじっくり勉強しても問題無いと考えています。

演習書

理論は後回しで良いので、演習を通して学びたい方もいらっしゃると思います。筆者としては、初学者向けに下記2冊をオススメします。なお、演習書ですので説明の分かりやすさなどの星付けは行いません。

演習で学ぶ電気磁気学 吉門 進三 (著)

前提事項の説明は最低限に、順序だてて問題が並んでいる構成になっています。本書に掲載されている問題をしっかり理解し、解けるようになれば、院試でも点数が取れるようになります。ただ、応用力を養成する観点では不安が残りますので、教科書については別で1冊持っておくことをオススメします。

他、院試向けの対策記事で毎回紹介していますが、下記もオススメです。

電磁気学演習 (理工基礎物理学演習ライブラリ 3) 山村 泰道 (著), 北川 盈雄 (著)

難しい問題ばかり収録されているわけでは無く、すぐに解き終わる問題でも、奥が深い考え方があることを教えてくれる1冊になっています。教科書の演習問題を解き終わった後は、下記の書籍で勉強を進めても良いかもしれません。

最後に

初学者向けの記事のため、詳解電磁気学演習などの進んだ演習書については紹介しませんでした。さらに進んだ教科書を見たい場合は、院試対策記事などを参照くださると幸いです。

また、砂川先生の書籍をオススメするサイト様も多いですが、少し理学部に寄った内容と感じています。(電気双極子などを初めとするミクロ的な考察が多いので) 工学部の学生が勉強するならば、他にも良い書籍はあります。本記事を中心に検討の一つに頂けると幸いです。

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