はじめに
本記事は、先日投稿した初学者向け電磁気学の勉強法指南記事の続きになります。大学に入ると、電磁気学と同じく電気回路学も早期に履修します。学部1年生から始まる大学も存在します。筆者が勉強し始めたのはもう10年以上前になりますが、当時は電磁気学と同じく苦労しました。
本サイトでは電気回路に関する記事を多数紹介していますが、初学者からすると難易度の高い問題も多数取り扱っています。そこで、本記事では、フォロー目的も兼ねて、高校と大学の電気回路の違いの説明と、初学者向けにお勧めする参考書を紹介していきます。
大学における電気回路学
計算に複素数、行列、微分方程式が入るようになった。ことに尽きます。オームの法則、キルヒホッフの法則の使用を基本として回路方程式を立てることに変わりませんが、数学的な計算が難しくなります。高校までは、電圧は直流源で抵抗素子しか考えないことが多く、実数だけで回路方程式を表現できることが多かったです。コイル、コンデンサが回路上に存在しても、定常状態のみ考えればよく、計算に微分項、積分項は存在しませんでした。よって、大学入試レベルの問題でも、中学数学レベルの計算で解くことができました。
しかし、大学では違います。

高校物理ではおまけ程度だったコイル、コンデンサが電気回路に殆ど入ってきます。電圧源も直流から交流中心になります。コイル、コンデンサの電圧は各々$L\frac{di}{dt},\frac{1}{C}\int i(t) dt$で表されるため、回路方程式としては、通常、微分項、積分項が入ります。微分方程式が解けないと、定常状態になるまでの電流、電圧の時間変化を求めることができません。また、定常状態に落ち着いてからも、交流回路条件下ではフェーザ表示なる概念を用いて、コイル、コンデンサにかかる電圧を虚数で表現します。複素数の計算が必要です。

また、二端子対回路の概念も出てきます。高校までは、一端子対回路が前提でした。入力電圧源から出力した電流は、入力電圧源の入力側に戻ってくる動きを想定していれば良かったです。一方で、二端子対回路では、回路の反対方向に出力端子を設けています。入力電圧、電流に対しての出力電圧、電流の関係を2*2行列としてパラメータ表示をします。この概念は高校には無く、行列を作成する作業が初心者の方からすると大変難しくなります。
上記違いに慣れることから始まります。
具体的な参考書
電気回路は演習に重きを置いて勉強した方が良いと考えます。電磁気学のように、証明に紙面を割いた教科書も良いですが、初学者向けからすると「そういうもんだ。」と思って一周することが重要です。
端的に分かりやすい教科書を集めましたので、ご購入の参考に頂けると幸いです。
新しい電気回路上下 松澤 昭 (著) (オススメ)
- 説明の分かりやすさ:☆☆☆☆
- 演習問題の選定内容、量:☆☆☆☆
- 例題、演習問題の解答の量、丁寧さ:☆☆☆☆
特にこだわりが無ければ、本参考書を最もオススメします。
説明が端的で初学者でも分かりやすく、院試まで使えます。演習問題としても、最近の試験傾向に即したものが多く、解答も十分あります。問題量も多すぎず、少なすぎず、欠点を見つける方が難しい参考書です。
強いて言えば、上の巻に過渡現象があることでしょうか。大学によっては、フェーザ表示⇒二端子対回路⇒過渡現象の順に講義が進みますが、本参考書では、二端子対回路と過渡現象の順が逆になっています。(下巻に二端子対回路があります。)
人によっては違和感を感じますが、基本的には些細なことです。まずは上巻だけでも購入してみて、本参考書の分かりやすさに触れてみてください。
電気回路 1 2 (電気・電子系教科書シリーズ 3) 柴田 尚志 (著)
- 説明の分かりやすさ:☆☆☆★
- 演習問題の選定内容、量:☆☆☆★
- 例題、演習問題の解答の量、丁寧さ:☆☆☆★
古き良き、説明が少し固めの参考書です。
勉強を進めていくと、突き詰めていきたくなる方もいらっしゃると思います。そういった時、先ほどの参考書では物足りなさが出てくる場合があります。本参考書は説明量が多く、試験対策にとらわれない領域まで突き詰めることができます。
演習問題も十分あります。解答についても、先ほどの参考書からは少し省いている部分もありますが、途中過程を初学者でも追うことができる粒度です。2つを比較して購入してみても良いかもしれません。
将来、電力系の講義の履修も目指す方は下記も選択に入ります。
新版 電気基礎 上下 川島 純一 (著), 斎藤 広吉 (著), 東京電機大学 (編集) 津村 栄一 (著), 宮﨑 登 (著), 菊地 諒 (著), 東京電機大学 (編集)
- 説明の分かりやすさ:☆☆★★
- 演習問題の選定内容、量:☆☆☆★
- 例題、演習問題の解答の量、丁寧さ:☆☆☆★
電気回路と関連のある電磁気学の説明が導入にあります。また、発展科目である電力工学に必要な知識(三相交流など)も一緒に学ぶことができます。将来、電力関係の研究、企業に就きたい場合は本参考書でも良いかもしれません。新版の教科書であり、演習問題についても量、解答ともに十分あります。
ただ、分量自体は一番あります。初学者向けには苦労するかもしれないので、電気回路の理解を優先するならば、上記2つにした方が良いと思います。
問題集
初心者向けの問題集については、下記がオススメです。
解きながら学ぶ電気回路演習 馬場 一隆 (著), 宮城 光信 (著)
易しめの問題が適切な分量で紹介されています。各章、演習問題を紹介する前に、解くのに必要な知識が4ページ前後で説明されています。教科書の説明が冗長と感じる方も、本書の説明なら疲れずに読み進められると思います。
電気回路の科目としての特性上、回路方程式を立式して高校&大学数学の知識を駆使して解く作業に終始します。電磁気学ほど理論は重要でないと(少なくとも筆者は)考えますので、習うより慣れろで勉強してみても良いかもしれません。
最後に
電磁気学の記事と同じく、詳解電気回路演習などの進んだ演習書については紹介しませんでした。さらに進んだ教科書を見たい場合は、院試対策記事などを参照くださると幸いです。

