【過渡現象】ラプラス変換または微分方程式のまま解く問題の使い分け

はじめに

電気回路の過渡現象の問題を解く際、回路方程式には微分項$\frac{di}{dt}$、積分項$\int$が含まれています。いわゆる微分方程式です。微分項は、インダクタによる誘導起電力、積分項はコンデンサによる極間電圧が対応しています。

微分方程式を解く際、ネイピア数、三角関数などの解を仮定して微分方程式のまま解く方法、ラプラス変換を用いて解く方法の二種類があります。
筆者は、前者の方法は覚えることが多いことから、なるべくラプラス変換を用いることをオススメしています。

しかし、一部の問題では微分方程式のまま用いた方が楽に解ける場合があります。また、微分方程式で解くことを想定している大学も存在します。そこで、本記事では、ラプラス変換で解ける問題と微分方程式で解いた方が良い問題の特徴を紹介します。また、院試対策にお役立てください。

ラプラス変換で解ける問題

考え方

s領域における目的変数の解を得た後、ラプラス逆変換をし、変数を時間領域に戻すときの計算の難しさで判断します。時間領域に戻した時、ネイピア数$(e^{-at})$だけで構成される項は、極をそのまま$-a$に対応させるだけで良く、楽に逆変換できます。

下記に示すRC回路、RL回路がそうです。

逆に言えば、ここまでがラプラス変換で楽に解ける問題です。$(e^{-at})$との積で構成される項$(e^{-at}\cos (bt)$の逆変換は特に複雑であることから、こういった解が想定される問題は、丁寧な誘導がある場合を除き、微分方程式のままで解きたいと考えます。

RC回路、RL回路

ばね(-kx)と質点が接続される運動系において、加速度項(xの2階微分)が含まれているため、単振動が発生します。これと同じく、コイルL(電荷の2階微分)とコンデンサC(電荷の定常項)が両方存在する電気回路では、電気振動が発生します。振動成分が存在する場合、三角関数項が出てくることから、$(e^{-at}\cos (bt))$が出てくる可能性も考えてラプラス変換に慎重になるべきです。

一方で、標記で示したような回路ではLかCしか存在しないです。そのため、振動成分が解に出てくることは考えなくて良く、ラプラス変換で解けると考えられます。直列だけでなく、並列になっていたり、少し複雑な回路でも当てはまります。

勿論、院試問題である以上、スイッチを切り替えて回路の構成を変えてきて、素直に解かせてくれないことが多いですが、その先でもLとCが両方存在しなければ一緒です。
連続条件(鎖交磁束不変の理、電荷保存則)に注意しながら、時間ごとの回路構成に合わせて回路方程式を立ててラプラス変換をし、時間変化を求めると良いです。
電圧源が直流(ステップ)ではなく、パルスである場合もありますが、この時も時間遅れ要素$e^{-as}$を用いて表現できます。下記の記事で紹介していますので、よろしければご覧ください。

微分方程式のまま解いた方が良い問題

RLC回路

前章までの説明で察した方も多いですが、ここで紹介します。極の条件にもよりますが、過制動、減衰制動の逆変換が特に難しいです。RLC直列回路を初めとして、詳しい導出は別サイトで豊富に存在します。

ラプラス変換とその使い方3<過渡現象編2>直流RLC直列回路の過渡現象 | 音声付き電気技術解説講座 | 公益社団法人 日本電気技術者協会
公益社団法人 電気技術者協会 本部が運営している、音声付き電気技術解説講座です。電気技術者の技術力と資質の向上をサポートします。

リンク先の式(19)、式(28)がそうです。参考に、式(19)を下記に示します。

ELC(R2)2eR2Ltsin(1LC(R2L)2t)\frac{E}{\sqrt{\frac{L}{C} – \left(\frac{R}{2}\right)^2}} \, e^{-\frac{R}{2L}t} \, \sin\left( \sqrt{\frac{1}{LC} – \left(\frac{R}{2L}\right)^2} \, t \right)

見るからに手計算では厳しい式ですね。

臨界制動のときは、三角関数項が無くなり計算しやすくなりますが、それでも$s^2$成分が極にあります。$te^{-at}$型になる事実を知っておかないと厳しそうです。問題にて公式が与えられているなどの誘導がある場合もありますので、作問者の意図を読みながら解いていきましょう。

微分方程式で解く場合も難航しますが、$A\cos(\omega t)$など、仮定する解を設けられる場合が多いです。仮定した解を微分方程式に代入し、初期条件を与えてやれば、未知数$A$が消えて特殊解が出てきます。ラプラス逆変換を難しくこなすことよりは、この方法の方が楽に解けることが多いです。

抵抗値$R$が時間変化する回路

レアケースですが、実際に阪大の院試で出題されたことがあります。下記のような回路です。

<条件>
初期の抵抗値1Ω、キャパシタンス1Fとし、$t=0 \sim t_o$までSW1を閉じ、$t=t_o$でSW1を開けて、SW2を閉じる。SW2を入れてから、抵抗値は1秒ごとに1Ω増えるとする。スイッチ切替時、コンデンサには電荷$Q_{t_o}$があるとする。

時間によって抵抗値が変化するって何事?と思うかもしれませんが、ジュール熱による温度変化を想定しているのですかね。純粋な電気回路としての知識だけでなく、数学的な知識も問われるのでやらしい問題です。

下記のように電荷$Q(t)$を変数として置き、変数分離法を用いて解けますので、そこまで複雑な計算を要求されているわけでは無いです。ただ、初見だと面食らいそうです。知識として持っておくと良いです。

<解答例>
\begin{aligned}R(t)\dfrac{dQ(t)}{dt}+\dfrac{Q(t)}{C}=0 \\ (1+t-t_o)\dfrac{dQ(t)}{dt}=-\dfrac{Q(t)}{C} \\ \dfrac{dQ(t)}{dt}=-\dfrac{dt}{1+t-t_o}\end{aligned}

両辺積分し

\begin{aligned}\int^{Q(t)}_{Q(t_o)} \dfrac{dQ(t)}{dt}dQ = -\int^{t}_{t_{o}}\dfrac{dt}{1+t-t_o} \\ \log \dfrac{Q(t)}{Q(t_o)}=\log(1+t-t_o) \\ Q(t)=Q(t_o)\left(\dfrac{1}{1+t-t_o}\right) \end{aligned}

仮定する解が思い浮かばない時

微分方程式のまま解く練習が不足しており、ラプラス変換で解かざるを得ない。でも、逆変換する公式が思い出せない。という緊急事態が本番で発生する場合があります。

こういった時、留数定理を用いて逆変換する手もあります。下記の記事で解説していますので、保険として持っておくと良いと思います。最後まで解けなくとも、方針として部分点が貰える可能性もあります。

最後に

本記事は、直流電圧源を接続した時の時間変化を想定しています。交流電圧源を接続したときは、これよりもさらに複雑になります。あまり出ないですが、注意しましょう。

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